三菱東京UFJ銀行が、海外支店向け勘定系システムにデスクトップ仮想化ソリューションを導入した。クライアント端末の柔軟性を高めつつ、勘定系システムやアプリケーションを国内で一括管理、ガバナンスとセキュリティの強化を図る試みだ。
同行の海外支店向け勘定系システム「オーバー・シーズ・システム」(OVS)に導入されたのは、シトリックス・システムズ・ジャパンのデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」を中核にした製品群。既にシンガポール支店での稼働を開始しており、今後シドニーやバンコクなどのアジア地域で1000台、欧州10カ国で1000台の、計2000台での本番稼働を予定している。
導入にあたっては、シトリックスのコンサルティングチームがシステム開発を担当した。また、インフラやアプリケーションなどで他のシステム開発会社も参加したが、企業名は非公開。
三菱東京UFJ銀行では、勘定系システムへのXenDesktopの採用が各部署から注目を受け、すべての海外支店のクライアント端末を仮想化し、集中管理したいという要望が上がっているという。今後はXenDesktopの新規利用を検討する予定だ。
クライアント管理の柔軟性を高めながらガバナンスを強化
2003年に欧州の各支店で稼働を開始したOVSは、銀行業務を担う勘定系と情報系、そして電子帳票システムとして構築されている。一方、クライアント端末は各支店が運用保守を行っていたが、営業日にシステムを停止できないため、休日に各支店1000台のクライアント端末を一括更新していた。また、クライアントで利用しているオフィススイートやメールなどのアプリケーションは、各支店でバージョンアップの自由度がなく、さらに各支店で異なるセキュリティ対策を実施しているため、ITガバナンスを効かせにくいという課題もあった。
各支店のクライアントではCitrix Receiverを導入しており、Citrix ICAプロトコルを通じて日本のデータセンターから配信される仮想デスクトップ環境を利用し、OVSを利用する仕組みを提供している。今回導入したデスクトップ仮想化ソリューションによって、各支店が利用するアプリケーションをクライアント端末にインストールしつつ、OVSによる勘定系および情報系システムが仮想化により分離されることになった。
XenDesktopを導入することで、クライアント環境のOSのイメージと実行環境を日本のデータセンターで集中管理することが可能になり、同行ではプログラムの改修やパッチの適用、支店側クライアント端末のリソース管理などの負荷を軽減できたとしている。また、セキュリティ対策を一括管理できるようになったため、より一層安全性を向上させることができたという。
支店ごとの業務で必要なアプリケーションなどは支店側に任せることで利便性と柔軟性を維持し、勘定系および情報系の業務アプリケーションは日本国内で集中管理、利用実態に即した運用とITガバナンスの確立を実現したとしている。
導入の決め手は、Citrix ICAのパフォーマンスにあったという。シトリックスでは、ネットワーク遅延による影響が低く、通常のクライアントでの利用と変わらない点が評価されたとしている。