2. サーバ仮想化によるメリット
サーバ仮想化技術を採用するメリットは多々ありますが、企業でのサーバ運用におけるメリットは「稼働率の向上」と「運用の効率化」による「コスト(TCO)削減」が一般的です。ハードウェアサポートが切れたWindows NTなど、レガシーシステムの延命のために仮想化技術を採用する企業も多くありますが、これは仮想化技術のメリットを十分に生かしきれていないケースといえます。
ではなぜ、サーバ仮想化技術を採用することでコスト(TCO)削減を実現できるのでしょうか。
サーバ運用の現状(スケールアウト)
企業内データセンターでサーバを構築する際に、単一の処理能力の高いサーバ機に複数のサービスを導入するのではなく、安価なラックマウントサーバやブレードサーバを複数台揃え、サービスや処理能力の増強のためにサーバ台数を増やしていく、スケールアウトで構成する状況があります。
スケールアウトは、ウェブなど多数の比較的単純な処理を同時並行的に行うケースで、更新データの整合性に対する要件が厳しくないケースに適しています。スケールアウト構成には、主に以下のようなメリットがあります。
- 負荷分散により全体のスループットやパフォーマンスが向上する
- それぞれのサービスを多数の独立したサーバに割当てるため、OSリブートやハードウェア障害による影響を最小限に抑えられ、メンテナンスの柔軟性や可用性が高くなる
これらのメリットがある一方で、多くのサーバで稼働率が低い状況が発生します。これは、個々のサーバの処理量を見積る際に、システムリソース(CPU、メモリなど)をピーク時処理量に合わせて構成するため、ピーク時以外の多くの時間は稼動せずに仕事を待っている状況が発生してしまうからです。
一般的に、処理の負荷状況が平均的なサーバはほとんど存在しません。データセンターでのサーバごとの平均稼働率は10%〜20%台であるとも言われており、平均稼働率を80%〜90%に高められれば、ハードウェアコストを現状の3分の1〜4分の1まで削減できる可能性があります。
また、スケールアウト構成では、物理的なサーバが増加するため、運用管理のコストが飛躍的に高くなります。十分に考慮された運用管理環境が用意されていない場合、サーバ数に応じてインストールや筐体ごとの管理を実施しなければならず、要員のコストも肥大化する可能性があります。
サーバ仮想化技術による改善
このような状況にサーバ仮想化技術を導入することで、個々のサーバは物理的なサーバの制限から開放された仮想マシンの上で稼動し、均一化された理想的なシステムとなり、サーバを仮想環境に集約することでができます。
仮想化されたサーバ環境では、必要に応じてそれぞれのサーバ(仮想マシン)にリソースを分配することができるため、より少ない台数のサーバで既存の要求をまかなうことができます。実際、サーバの稼働台数を大幅に減らし、平均利用効率を高めることに成功した企業も増えてきています。
分散した物理サーバをどのように束ね、どのように複数の仮想マシンを実装していくかが重要となります。