F5ネットワークスジャパンは、アプリケーショントラフィック管理システム「BIG-IP」の最新版「BIG-IP version11」(BIG-IP v11)を発表した。9月から販売する。
プロビジョニングを高速化する機能「iApps」を新たに搭載したほか、アプリケーションの変化に応じてネットワークを自在に対応させる機能「ScaleN」の装備、セキュリティの強化などが特長だ。同社社長のアリイ・ヒロシ氏は「今後2年間で、BIG-IPの売り上げを2倍にすることを目指す」と述べている。
BIG-IP v11は、アプリケーションを中心にサービス全体を包括的に管理できる。デバイスやオブジェクトごとに管理したり制御したりする手法ではないため、アプリケーションのプロビジョニングを最大で、これまでの100倍高速に実現できるという。
その基盤となるのが、iAppsだ。アプリケーションサービスの実装プロセスを簡素化するとともに、わかりやすいテンプレートを用意し、アプリケーションごとのポリシーに応じた設定を容易に実行できる。同社のシニアソリューションマーケティングマネジャーの帆士敏博氏は「従来、BIG-IPの設定には数週間かかることもあったが、iAppsで数時間程度に短縮できる」と話す。
ScaleNは、アプリケーションの利用環境の変動に伴う、ネットワークインフラへの要件の変化などにも柔軟に対応可能で、ネットワークインフラのスケールアップやスケールアウト、いずれの要求にも対応できる。
同社によれば、これまで一般的な負荷分散装置や、いわゆるアプリケーショントラフィック管理システムには、課題があったという。「通常のマシンと待機用のマシンという構成では、待機用のマシンは普段はいわば何もしないため、コスト高になる。また、通常マシンのリソースを有効活用できなかったり、障害時のフェールオーバの際、サービス全体が停止してしまう懸念があった」と帆士氏は指摘する。
そこでScaleNには、今回新たにデバイスサービスクラスタ機能を取り入れた。これにより「通常マシンだけで構成ができ、待機マシンのコスト問題を解決できる。また、アプリケーションへのリソースが不足すれば、適切なデバイスへ移動できるほか、デバイス全体のリソースが不足した場合、デバイスの追加も可能になる」(帆士氏)という。
セキュリティでは、複数のレイヤにわたる攻撃に対しても、対応可能だ。統合型アクセスコントロールを実現するとともにウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を強化している。株価や価格情報などがリアルタイムで更新されるサイトなどでのWeb 2.0アプリケーションを保護する機能も用意され、ポリシー違反があるとユーザー側にアラートが表示される。
米F5 Networksのプロダクトマネージメント/プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのEric Giesa氏は「我々は、変化に対し、機敏、迅速に対応できる“ダイナミックデータセンター”の実現を目指してきた。iAppsはサービス全体を統合化でき、ScaleNは柔軟性や拡張性を大きく向上させている。BIG-IP v11は、当社のこの10年間のビジョンをほぼ取り込んでいる」と語り、同社の開発の成果に対し、強い自信を示した。