VMwareでは、2006年に「DRS(Distributed Resource Scheduler)」と呼ばれる技術を導入しました。DRSは、複数のサーバの集合体の中でVMwareのスケジューリングを可能にするものです。DRSに8台、16台、あるいは32台のサーバを登録することで、複数台のサーバをひとつのマシンのように使えます。たとえば、メインフレームの時代には複数のプロセッサをひとつのOSでハンドリングしていくことがありましたが、それに近い感覚です。
こういったDRSのアプローチを、今度はvSphere 5の中でストレージに適用しました。ストレージアレイ全体に対して、可用性の高いものや普通のものなど、サービス特性に基づいてクラス分けを行いグループを作成します。そしてアプリケーションの必要に応じて、最適なクラスのストレージアレイを割り当てられるようにしました。
ストレージアレイのスペースが、アプリケーションの要求に応えられないほど足りなくなったときには、同等のストレージアレイに移していくことが可能です。こういった形でデータセンターの中で高度な自動化を推進できるのです。
導入進むSRM
――日本では基幹系やERPの仮想化は見えてこない状況ですが、米国ではこれらの仮想化は珍しくないのでしょうか?
米国では、SAPの生産系アプリケーションの仮想化が進んでいます。米国だけでなく、たとえばドイツの自動車メーカーでは、vSphereのソフトウェアを使って組み立て工場を運営しています。
――現在の日本企業は、特にDR(Disaster Recovery)に注目してると思われます。震災以降、事業継続性をどう担保していくかという部分ですね。海外のSRMの導入事例はあるのでしょうか?
SRMについては、VMwareにはグローバルで3000社以上の顧客がいます。vSphere 4は、ストレージアレイのレプリケーションに依存する必要がありました。しかし、vSphere 5はレプリケーションがビルトインで用意されています。このため、従来中心だった大企業だけでなく、より幅広いお客様に採用していただくことができるようになりました。すでに多くの成功事例があります。
特に米国、北米の南東部では毎年多くのサイクロンが発生するため、このようなフレームワークを導入している企業が多くなっています。また、2010年にオーストラリアのブリスベン地域で嵐や洪水が続いた際にも、VMwareの製品がお役に立っています。
日本国内でもSRMでリカバリの実例があります。3月11日の東日本大震災の際に、欧州企業の日本支店である会社が東京と関西でSRMを導入していた例があります。地震の発生でいったんサービスが落ちましたが、仮想化された部分は1日で復旧しました。
事業継続は人やプロセスも重要
――企業にとって、事業継続は売り上げを伸ばす方向の投資ではないため、コストをかけづらい部分であるといえます。SRMを導入しようとしても、上司が許可を出さないケースも多いと聞きます。こういう場合、どのようなセールストークをするのでしょうか?
一般的に、企業には2つのタイプがあると思います。ひとつは、一部のビジネスアプリケーションに事業継続性を持たせなければならない業界の企業。こういった企業は、事業継続対策をやらなければならないことは理解しているので、ある範囲から効率が良くて柔軟性に富むベストな解決策を選ぶことになります。そういう企業にVMwareの製品を提供します。
もうひとつは、それ以外の業界ということになります。このような企業に対しては、まず啓発から始めています。企業の事業継続性の戦略として、どのような要素を備える必要があるのか、VMwareの製品がどのような部分でお役に立てるかという説明から入っていくことになります。
それはCIO(最高情報責任者)レベルへのメッセージであり、インフラ担当へのメッセージということになります。事業継続性の対策は技術の問題だけでなく、災害時の人の動き、プロセスの問題でもあるのです。
(後編は8月30日に掲載予定です)
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