富士通、新クラウド基盤を2012年にも提供--背景にはビッグデータのニーズ

大川 淳

2011-08-31 08:00

 富士通は8月30日、ビッグデータを活用するクラウド基盤「コンバージェンスサービス・プラットフォーム(仮称)」の先行版を、2011年度第4四半期に提供を開始、順次サービスを展開していくと発表した。

 このプラットフォームを活用することで、ユーザーは自社製品やサービスの付加価値の向上、情報サービス事業の迅速な立ち上げ、地域情報の融合によるコミュニティの連携強化などが可能になるという。

 富士通では、ITで人々がより豊かに安心して暮らせる社会「ヒューマンセントリック・インテリジェントソサエティ」というコンセプトを掲げており、コンバージェンスサービス・プラットフォーム(CSPF)は、この構想を具現化させるための中核的な技術となる。

 「コンバージェンスサービス」は、センサによって得られた大量のデータを収集、蓄積、分析し、その結果として導き出された情報を活かし、人々に便益をもたらすものだ。その基盤となるCSPFは、複合イベント処理、並列分散処理、圧縮と匿名化、マッシュアップなど、ビッグデータの利活用に必要な技術がクラウド上に全て統合されたプラットフォームとなる。

 CSPFは、さまざまなセンサから収集されたデータや業務トランザクションログ、テキストデータ、バイナリストリームなど、異種類の大量データを多様な目的で融合することができるため、これまでになかったデータの使い方や切り口での分析が可能となる。

 サービスの性質に応じ、データ量やサーバ数などを小規模から利用することが可能。必要な分だけリソースを利用できるため、適正なコストで運用することができ、着手しやすく、試行的な取り組みもできるという。

 富士通では、CSPFを提供するにあたり、プラットフォームをPaaSとして提供する。ユーザー企業などがプラットフォーム上で自社用アプリケーションを開発できる「インテグレーション型」のほか、富士通がプラットフォーム上で各種アプリケーションサービスを提供する「アプリ・サービス型」、顧客のデータの分析環境、プラットフォーム上に蓄積されたデータの活用などが中心の「データ型」の3つの形態を想定している。

 「コンバージェンスサービス」の具体的なイメージの例は、以下のようになる。

 小売業の場合、店舗内での人の動きをデータとして集め、プラットフォームがそれを分析し、POSなどの既存データと連携させて棚割りやレイアウトなどに活かす、といった例が考えられる。あるいは、都市での特定の地域で、ビル群のエネルギー消費状況についての情報を収集、分析し、指標や基準を策定、エネルギーの無駄な使い方を排し、適正なエネルギー消費ができるような仕組みをつくる。

川妻庸男氏 川妻庸男氏

 富士通 執行役員常務 コンバージェンスサービスグループ長の川妻庸男氏は、「CSPFによるサービスを新しい事業分野として立ち上げていきたい。現実の顧客層は、製造業、輸送系、建築をはじめさまざまであり、幅広いマーケットを考えている。ビジネスの規模は、数年程度で1000億円にまで成長させたい」と話す。

 CSPFは、センサーを通じて取得したデータをリアルタイム処理し、データからその意味するものを読み取る「コンテキスト抽出」を行い、それをユーザーが求める情報や、ユーザーの状況に適した情報を選択し、ユーザーに利便性をもたらす「レコメンデーション」や、将来予測、シミュレーションなどの形にするわけだが、リアルタイム処理では、並列イベント・ストリーム技術を用いている。また、蓄積される膨大なデータを、必要時に素早く取り出せるよう、ファイルのまま多種多様な情報を格納できる格納庫を採用している。ここでは、事前定義により、自動的にカテゴリ分類ができ、安定した性能で情報を抽出できるという。

藤田和彦氏 藤田和彦氏

 富士通 クラウドプラットフォーム開発本部 コンバージェンスサービスプラットフォーム開発統括部長の藤田和彦氏は、「並列分散処理により、ビッグデータも最大で数分程度で分析することができる。サービスは基本的にウェブサービス形式になり、既存のウェブサービスとの統合化も可能。マッシュアップで、さまざまなサービスを構築することができる」と語る。

 富士通ではまず、先行版として「CSPF V.1」を2011年度第4四半期(2012年1〜3月)に提供を開始する。この段階では、「どのようなことを実現させたいかなど、ユーザーと論議する」(藤田氏)。「同V.2」は2012年度第2四半期(2012年7〜9月)に提供する予定だ。

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