“ポストPC”時代はもう始まっている--コンシューマライゼーション対応を加速するヴイエムウェア - (page 2)

田中好伸 (編集部)

2011-08-31 16:18

アプリケーションとデータを分離する

 すでに始まっているポストPCの時代では、エンドユーザーとアプリケーションの関係も変わってくる。エンドユーザーはいつでもどこからでも、どんな端末からでも、企業内の情報にアクセスして業務を遂行したいというのがホンネだ。また使うアプリケーションもWindowsベースのものもあれば、パブリッククラウドのSaaS、ERPやCRMといったビジネスアプリケーションもある。企業のエンドユーザーとアプリケーションの関係は、コンシューマーライゼーションの流れの中で大きく変わってきている。それでは、Young氏が言うところの“新しいアプローチ”とはどうあるべきなのか?

 VMwareのカンファレンス「VMworld 2011」の8月30日の講演で、同社最高技術責任者(CTO)のSteve Herrod氏は、その答えとして「Universal Service Broker」を中核にしたエンドユーザーコンピューティング(EUC)基盤を説明している(ここで言うEUCはかつて流行したEUCとは全く違う概念であることに留意されたい)。

写真2 Universal Service Brokerを中核にしたEUC基盤のイメージ
※クリックすると拡大画像が見られます

 Herrod氏が提唱するポストPC時代のEUCとは、これまで密結合していたデスクトップとアプリケーション、アプリケーション上のデータをそれぞれデスクトップサービス、アプリケーションカタログサービス、データサービスに分ける。これらのサービスは、自分の好きな端末からアクセスできるが、その管理をするのがUniversal Service Brokerだ。

 このUniversal Service Brokerは、端末やアプリケーション、データというそれぞれのポリシーで管理しており、どの端末からアクセスしても、エンドユーザーは自分のデータにアクセスできるというものだ。アプリケーションカタログサービスにあるアプリケーションはPCはもちろん、スマートフォンにもインストールできる。そしてPCで使ったデータはスマートフォンからもアクセスできる。クライアント端末からのアクセスはいずれも安全に行うことができ、あるエンドユーザーが退職したら、そのデータも自動的に削除されることになる。Herrod氏は、この仕組みを「ユーザー中心」という言葉で説明する。

写真3 Steve Herrod氏

 先に挙げたHorizonがUniversal Service Brokerを担うものであり、デスクトップサービスを実現するものとしてViewを位置付けている。Horizon Mobileも、Universal Service Brokerを中核にしたEUC基盤の一端を担うものだ。

密結合から疎結合へ

 このUniversal Service Brokerを中核にしたEUC基盤を実現するため、VMwareは新しい製品開発を進めている。「Project ThinApp Factory」は、アプリケーションカタログサービスを実現するものとして開発を進めている。データサービスを担うものとして「Project Octopus」が進められており、さまざまな端末からのアクセスを担うものとして「Project AppBlast」も進められている。

 Project Octopusは、いわば「Dropboxタイプのサービスを企業向けに提供する」(Herrod氏)もので、好きな端末からアクセスして共有でき、技術的にはパブリッククラウドにも対応できるとしている。Project OctopusはVMwareが買収したZimbraやMozyのデータ同期技術を企業向けに拡張したサービスで、HorizonやViewに統合可能なものだという。

写真4 Universal Service Brokerを中核にしたEUC基盤とVMware製品の位置付け
※クリックすると拡大画像が見られます

 もう一つのProject AppBlastは、さまざまなアプリケーションをHTML5に変換して使えるようにする技術だ。講演の中でHerrod氏は、ExcelデータをiPadで使うために、ブラウザ上でHTML5に変換して、データを入力するというデモを見せていた。

 これまでのVDIは、OSやアプリケーションを仮想化することで、ハードウェアにユーザーが利用するデータを残さないことができるシンクライアントのメリットをもたらしてきた。いわば、ハードウェアと、OSやアプリケーションの関係を密結合から疎結合に変化させた。

 ハイパーバイザによって、ハードウェアとしてのサーバと、OSやアプリケーションは密結合から疎結合へと、その関係は変わった。これとは別に、情報システムの工法として、この数年でサービス指向アーキテクチャ(SOA)が一般的になりつつあるが、SOAがもたらしたものは、システムの機能をサービス化して、必要なものはエンタープライズサービスバス(ESB)を経由するという発想である。

 VMwareが提唱する、Universal Service Brokerを中核にしたEUC基盤は、マシンとアプリケーション、そしてデータをそれぞれ疎結合にしたとも言える。この考え方はSOAという考え方の影響を大きく受けたとも指摘できる。というのは、デスクトップサービスやアプリケーションカタログサービス、データサービスという名前が示す通り、“サービス”という言葉が使われているからだ(もっと言えば、SOAの中核がESBであるのに対して、VMwareはUSBを中核にしている。ここにも類似点があると指摘できる)。

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