「まぁいいや。でも、大体想像はつくよ。要は“どのアプリケーションでどのような技術やインフラを使うか?”っていう関係を整理しろって言いたいんでしょ?」
「そうです。要は進化論の中で、“どのような技術レベルに行くか?”ってのもあわせて整理するんですが、“どのアプリケーションをどのような技術、どのアーキテクチャで作り、どのインフラで動かしていくか?”ってことを考えるってことなんです」
「うん。何を従来通りの技術で動かして、何を新しい技術で作っていくか。こういう整理をするってことだね?」
「そうです。当然、進んでいる企業は、すべて新しい技術でやっていくってことなんですけど、進化中の企業なんかは、順次新しい技術を入れています。それを、どこにどういう適用範囲にしていくか? これを整理するわけですね」
「うん。ウチなんてケチケチだから、この辺はとにかく安いってことを基準に技術を入れ替えていくんだろうね」
「そうです。ある会社によっては、安いんじゃなくて、柔軟性が高いってことが重要でしょうし、別の会社によっては安定的っていうのが何よりも大切なことがあります。一概に新しけりゃいいってものではないので、インフラの要請をバランスを取りながら見極めて、賢い選択をするってのが大切ですね」
クラウドは戦略の最後に考える
「で、“どこから買うか?”だね」
「はい。安かろう、悪かろうで構わないものもあれば、自分のことをよく理解してくれている仕立て屋さんに頼むべきときもあれば、ちょっと尖ったものの方がいい時もあります。でも、高いのはちょっと…っていう時も」
「私のファッションに例えると、ジャケットなんかは体に合うものがいいから、付き合いの長いベンダーさんだね、そういう意味では」
「そうですね。じゃ、替えを利かせたいシャツとかパンツとかは?」
「差し詰め自由に買い替えができる…う~ん…クラウドベンダーとか?」
「あ、いいですねぇ。クラウドベンダーは、IT業界のファストファッションって感じですか…それ、頂きます」
「こらこら。え~と…じゃ、靴はとびきりだから、ちょっと革新的なオンリーワンのベンダーさんってことかな?」
「なんか、部長、いいですね」
「で、ソックスとネクタイはまぁ、消耗品みたいなもんだから…安かろう悪かろうってところかな。そういう意味でオフショアも含めていいところを探すって感じか?」
「なるほど。いいですね、面白い。ITも同じでしょうね。ご存じの通り、前からも選択肢ってのは沢山ありましたけれど、どちらかと言えば似たり寄ったりでした。でも、オフショアも普通にやられるようになってきて、クラウドベンダーなども視界に入ってくるようになってくれば、調達って言うのは非常に簡単になってきますよね」
「これがマルチソーシングってことかね?」
「そうですね。従来も結局はいろいろなところとお付き合いはされていると思いますし、いろいろとお考えをお持ちになって、お付き合いをされていたと思いますけれど、中にはベンダーに主導権が移ってしまっているもの、ありましたよね?」
「そうだね。アウトソーシングなんて、診断してもらうまでは、明らかにベンダーが開き直っていたからなぁ」
「そうです。そこに、現代風に部長の意図をアレンジして、お付き合いを再整理する必要がありますよね。単に新しいものでもなく、単に付き合いの長いものでもなく。繰り返しますが、意図を十分に反映した形で」
「でもさ、一番最初に、クラウドなんて考えている場合じゃないって言っていたじゃない? なんか嘘臭くない?」
「部長、これ、最後の最後ですよ。僕が部長にお話するテーマ、あと1つですから」
「なるほど。クラウドなんて、戦略の最後に考えるべきことだっていうことか?」
「ナイスプレイ! そういうことです」
(編集部より:IT戦略をまとめていく中で、共通化と標準化、アプリケケーションとインフラの在り方、ソーシングの考え方をまとめてきました。ここからIT戦略の明確な姿が見えてきます。続きは9月8日に掲載予定です)
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宮本認(みやもとみとむ)
ガートナー ジャパン株式会社
コンサルティング部門マネージング・パートナー
大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。
編集:田中好伸
Twitterアカウント:@tanakayoshinobu
青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。