2015年には、インターネットのユーザーが10億人以上に増加し、インターネットに接続する機器は150億台に、インターネット上のトラフィックは1000エクサバイトを超えると見込まれている。
来日した米Intel 副社長兼データセンター・コネクテッド・システム事業部長のKirk Skaugen氏は、「ムーアの法則の有効性は継続しており、CPUコアの集積度は年々大きく向上している。従来、15台のサーバが必要だった作業を1台のサーバで処理することができる。その導入コストは2〜5カ月で回収できるだろう。ハードのコストも消費電力も大幅に削減できる。省電力はいまの日本には特に重要であろう」と話す。
Intelはクラウドをさらに進化、発展させることを目指す「Cloud 2015」構想を2010年に発表しており、クラウド間の互換性を確保するための標準化、アプリケ−ションやリソースの自動化などの実現を図っている。これを促進するため、同時期に新たなコンソーシアム「Open Data Center Alliance(ODCA)」が設立された。
ODCAでは、クラウドに対するユーザーニーズをドキュメント化し、オープンなデータセンター構築に向けた8つの利用モデルを定義。また、クラウド普及の妨げになっている緊急性の高い課題に対する解決策の検討などを進めている。IntelはODCAの技術アドバイザーとして活動しており、ODCAが設定するクラウドインフラストラクチャの要件に対し、具体的なソリューションを提示する「Intel Cloud Builders」を設けている。
この1年で、参加企業は当初の70社から280社以上に増加した。Skaugen氏は「ODCAは、Intelや参加各社のものではない。相互に協力して、標準化されたクラウドサービスを実現させようとしている。多くの日本企業がODCAに参加し、さまざまな意見を述べてほしい」としている。
エクサスケール時代に求められる処理性能
Intelは、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)向けのアーキテクチャーとして、「Many Integrated Core(MIC)」を機軸とした製品の投入計画を発表している。MICを用いた最初の製品は、22ナノメートルの製造プロセス技術を用い、50以上のコアを集積する。同社は、MIC準拠製品とXeonプロセッサの組み合わせにより、2018年までに1エクサFLOPS(1秒間に10の18乗回の浮動小数点演算)を実現する、エクサスケールのコンピューティング技術を確立しようとしている。「現在最高速のスーパーコンピュータの100倍の処理能力にする一方、消費電力は2倍ですむ」(Skaugen氏)ようにすることが目標だ。
MICのアーキテクチャはすでに複数の同社パートナーが検証を始めている。東京大学もそのひとつで、高性能計算環境の研究に取り組んでいる東京大学大学院 情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻教授 情報基盤センター長の石川裕氏は「スーパーコンピュータは今後、科学技術計算だけでなく、大規模データ解析にも注力するようになる。そのためには、浮動小数点演算性能を向上させ、さらに並列処理性能なども高くしなければならない」と指摘。
ここでMICが鍵となる。MICを採用したのは「MICがx86ベースであり、単一のアーキテクチャでクラスタを構成できること。また、我々はHPC向けの独自OSを開発しており、必要なシステムアーキテクチャが開示されていることを評価した。さらに、サポートの点でIntelはよく支援してくれている」ことなどが理由であるという。
次世代データセンターの基盤となるXeonプロセッサのロードマップについては、「開発は順調」(Skaugen氏)とコメント。1ソケット最大8コアのSandy Bridge-EPは、予定通り2011年末に出荷されるという。また、Itaniumは今後、32ナノメートルの製造プロセスを採用、4コアを8コアとする。