IT戦略は敵に勝つための設備計画 - (page 2)

宮本認 (ガートナー ジャパン) 2011年09月08日 12時00分

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「はい。以前に本で読んだんですが、米軍の戦略が書いてあったんです。それは、次のようなものでした。仮想敵は中東。中東は砂漠地帯。ここでは占領戦で勝つ必要がある。そのためには
(1)宇宙から衛星で偵察する
(2)その映像を超高度で飛んでいる偵察機に送り、更なる状況確認をする
(3)空母から戦闘機を出し、敵航空戦力と戦い、制空権を取る
(4)空母や周辺の空軍基地から、爆撃機を出し、軍事的重要拠点を破壊する
(5)海兵隊による上陸作戦を開始
(6)ヘリコプターを飛ばし、地上の塹壕、戦車などを破壊する
(7)その後に戦車を出して、占領戦を開始する
(8)最後に陸軍歩兵が地域を制圧する
っていうものです。これ、絵にすると、我々が書く業務フローみたいなものが出来上がるんですよ」

「なるほど~、敵に勝つ業務フローってそういうことね」

「当然、そのための目標のブレイクダウンとかいろいろな要素はあるんですが、多くの場合、業務フローとして書こうと思えば、書ける内容ですよね。企業でも同様なのではないでしょうか? 勝つために、それぞれの部署や担当が連動して、それぞれの役割をこなすわけですが、その連動そのものが競争相手、すなわち敵に勝てるように動く…。だから、業務フローそのものが戦略が具現化されているものなんだと思います。ま、逆を言えば、漫然と組んだ業務フローは、戦略性がないってことになるのかもしれないですけどね」

「う~ん…100%賛同できるかどうかは、今はなんとも言えないけれど、面白い意見ではあるなぁ…」

「ありがとうございます」

中期経営計画とIT戦略では時間の概念が違う

「じゃ、IT戦略っていう時の戦略は?」

「これは単純に設備計画だと思うんですよね。ま、さっきの米軍で言えば上述したところまでは、“戦略”を具現化するための“戦術の集合”であって、その戦術を可能にする設備計画ってところでしょうか。何をやって何をやらないって行為は、戦略的ではあるんですけど、“仮想敵を持て”とは言いましたが、実際のところ、敵がいるわけじゃないですからね」

「なるほどね。ただ、設備計画と言えども、無尽蔵に整備できるわけではないから、いろいろと知恵を絞らねばならないということかな?」

「ま、そういうことです。当然、そういうこと以外に永続的にユーザーに付加価値を出していく仕組みを作るとか、いろいろあるんですけど、結局のところは、勝つ業務フローを実現するための設備を整えるということに尽きるんだと思います」

「日本企業の場合、戦略は中計(中期経営計画)にある…という具合の理解があるじゃない? アレとIT戦略ってのはどこまで連動しなければいけないのかな?」

「あぁ…それも難しい問題ですね。各社の中計にもいろいろあるので、一言では言い難いんですが、中計とIT戦略で一番違うものは、時間の概念です。ITって償却期間が5年とか結構長いです。中計を考える期間よりも長いんですね。だから必ずしも連動する必要はないと思っています。ただ…」

「何?」

「中計の成長戦略とは連動しないといけないですよね。何を強化していくのか。そこを助けられないITというのはもう存在意義はない」

「ま、そうだな」

「言うなれば、成長戦略として連動すべきところは連動し、ITとして独自に考えるべきところは粛々と長期の視点を持って考える。そういうことでいいんじゃないでしょうか?」

「そうだね。でさぁ、今までいろいろと話してもらったけど、宮本君、今まで話してくれたもの、ウチの仕事として、やりたくない?」

「そりゃもう、喜んで! 是非やらせてください! で部長、僕、ノドが乾きました。ビールおごってください」

「お? いいよ。でも、俺が行くとこ、立ち飲みだよ、いいの?」

「いいですねぇ。早速行きましょう」

「じゃ、ちょっと待ってて。すぐ支度してくるから」

編集部より:情報システム部長との会話からIT戦略の在るべき姿が見えてきました。9月15日掲載予定の最終回では、IT戦略の本質をわかりやすく解説します

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宮本認(みやもとみとむ)

ガートナー ジャパン株式会社

コンサルティング部門マネージング・パートナー

大手外資系コンサルティングファーム、大手SIerを経て現職。16業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。ソリューションプロバイダの事業戦略、組織戦略、ソリューション開発戦略、営業戦略を担当。また、金融、流通業、製造業を中心にIT戦略、EA構築、プロジェクト管理力向上、アウトソーシング戦略プロジェクトの経験も多数持つ。

編集:田中好伸

Twitterアカウント:@tanakayoshinobu

青森生まれ。学生時代から出版に携わり、入社前は大手ビジネス誌で編集者を務めていた。2005年に現在の朝日インタラクティブに入社し、ユーザー事例、IFRS(国際会計基準)、セキュリティなどを担当。現在は、データウェアハウス、クラウド関連技術に関心がある。社内では“編集部一の職人”としての顔も。

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