シトリックス・システムズ・ジャパンは9月8日、デスクトップ仮想化ソフトウェアの最新版「Citrix XenDesktop 5.5」とベアメタル型クライアントハイパーバイザの最新版「Citrix XenClient 2」を発表した。XenDesktop 5.5は10~12月中にパートナー企業から提供される予定となっている。
Windows資産を生かしながら非Windows端末に対応
XenDesktop 5.5では「パーソナルVDI」と呼ぶ仕組みが搭載されている。これまでの仮想デスクトップ基盤(VDI)では、エンドユーザーごとに仮想マシン(VM)を割り当て、エンドユーザー専用のイメージを用意する方法と、すべてのエンドユーザーに同一のVMとイメージをプールする方法があるが、どうしても前者のエンドユーザーごとのイメージを提供するケースは、コストが割高になってしまう傾向がある。今回のパーソナルVDIでは、両方のいいとこ取りをしている。
単一のイメージを一括展開することでコストと標準化のメリットを得られる一方で、エンドユーザーごとの専用環境を提供できる。エンドユーザーは個人ごとのデータと設定情報を活用することができる。これはCitrixが8月に買収したRingCubeから取得した技術「Personal vDisk」を応用している。1つのWindowsを一元的に保管して、VDIを企業全体に導入しながら、エンドユーザーのアプリケーションやデータ、設定情報をPersonal vDiskを利用して、パーソナライズされた環境を提供しつつ、ストレージコストを削減できるという。
VDIのフロントエンドツールである「Citrix Receiver」と組み合わせることで、PCやMac、タブレット、スマートフォン、シンクライアントなど10億以上の端末に配信できるという。もちろんiOSやAndroid、Chrome OSにも対応しており、HTML5もサポートしている。
今回のXenDesktop 5.5では、同社の配信技術「Citrix HDX」にも過去最大という改良が加えられている。VDIをWAN上でモバイルユーザーや支店支社のエンドユーザーに最大3倍の速さで配信できるようになっているという。印刷やスキャンの速度が6倍になり、アプリケーションの起動速度も2倍に高速化されていると説明している。
※クリックすると拡大画像が見られます
今回改良が加えられたHDXでは、同社独自のイメージ表示用プロトコルである「ICA」を改良した「マルチストリームICA」をベースにしている。マルチストリームICAは、画面をリアルタイム、インタラクティブ、バルク、バックグラウンドという4つのICAに分け、加えて音声の1つ、計5つの通信で配信するというものだ。この技術で、さまざまなネットワーク下でも「優れたユーザー体験を実現する」(プロダクトマーケティングシニアマネージャーの竹内裕治氏)という、柔軟なサービス品質制御(QoS)管理機能が搭載されている。
XenDesktop 5.5には、主要コンポーネントとしてアプリケーション仮想化ソフトウェアの最新版「Citrix XenApp 6.5」が内蔵されている。XenApp 6.5ではWindowsアプリケーションを100%仮想化して、サービスとして提供できるという。
竹内氏は、スマートフォンやタブレットが急激に普及している現在の状況を「非Windowsデバイスが増えている」と話し、コンシューマライゼーションの流れが誰の目にも明らかであることを強調している。その一方で、「企業はこれまでに資産としてPCに投資してきた」ことを指摘。その上で「Windowsのデスクトップやアプリケーションがビジネスンのメインストリーム」であることも指摘している。今回発表したXenDesktop 5.5を活用すれば、普及が拡大する非Windows端末とWindows PCとそのアプリケーションという両方の資産を活用できると強調している。
本番環境で使えるXenClient 2
XenClientは、ベアメタル型のハイパーバイザであり、ホストOSが要らない。XenClientの上に、複数のマシンを起動させられる「ローカルVMベースデスクトップ」と呼ばれる仕組みが基本だ。画面転送型の仮想デスクトップと異なり、既存の“ファットPC”と同じようにオフラインでもデスクトップを使うことができ、複数のデスクトップ環境を同時に切り替えることも可能だ。