Google Translateはいわゆる自動翻訳サービスだが、そのユニークな点は、従来型の自動翻訳のように辞書や文法ルールを使っていないという点だ。
Google Translateは主に国連から提供された大量の文書とその翻訳文を入力として統計的に分析し、その分析情報だけに基づいて翻訳している。決してパーフェクトとは言えないが、大量のデータがあればこのような仕組みでも十分に機能するのである。
ところで、昔、筆者が出席したあるセミナーで講演者がGoogle Translateの仕組み(辞書も文法ルールも使わない)を説明した時に会場が笑いに包まれたのを覚えている。このように一見ばかげたアイデアにしか思えないソリューションを現実のものにしてくれるのが「ビッグデータ」の力だ。
「ビッグデータ」のあらゆる応用分野について触れるスペースはないが、特にセンサ関連分野では今までにない斬新かつ有効性がきわめて高いソリューションが期待できると個人的には考えている。
たとえば、自動車に搭載したコンピュータから運転情報を収集し、急ブレーキが多い交差点が発見されると、それに基づき車線の配置を変更し、事故を未然に防止できた例などがある。保険契約者の車にGPS搭載の機器を設置して運行情報を収集し、実際の走行パターンに応じて保険料金を毎月決定する(たとえば、深夜の高速道路などハイリスクの走行パターンが多かった月は保険料金が高くなる)などの斬新なビジネス・モデルも既に実用化されている。
これらの応用事例は、データ量はさほど多くないため、厳密に言えば「ビッグデータ」の事例ではない。しかし、データ分析が提供する価値の可能性を示している点、さらに大量のデータを活用することで大きな改善が期待できる点で注目に値するだろう。
ユーザーが今やるべきこと
このような大きな可能性に対して、まだ自社はそこまでの準備ができていないと考えるユーザー企業は多いだろう。確かに、短期的に「ビッグデータ」を業務に活用できるほどの大量データを生成している業種や企業は限られている。しかし、だからと言って単に様子見をしていればよいわけでもない。今からでもできること(正確に言えば、やらなければいけないこと)もある。
それは、社内の既存データ資産を調査し、それがどのように活用されているか(あるいは、活用されていないか)を把握して改善することだ。スモールデータを使いこなせなければ、ビッグデータを使いこなすこともできないからだ。
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