1984年、Jobs氏は自分が採用したJohn Sculley氏にアップルを追放されてしまうわけだが、その大きな理由のひとつは、MacintoshとPCとの相互運用性を高めるなどのオープン化戦略に強く反対したからと言われている。Jobs氏は自分が作り上げたMacintoshの世界にPCの異分子が入り込んだり、ユーザーが「勝手に」自分のマシンを拡張したりすることに我慢がならなかったのだ。
Jobs氏がAppleを退職後に立ち上げたNeXTによるNeXT Cubeも、お粗末な(少なくとも著しくバランスを欠いた)マシンだった。実は私が米国留学中、研究室にNeXT Cubeが寄贈され、私もしばらくいじってみたことがある。確かにデザインはすばらしいのだがあまりも遅かった。メインディスクにMOを使っていたのが大きな理由だと思う。私を含め最初は珍しがって触っていた学生たちも、誰も手を付けなくなっていたのを思い出す。もちろん、NeXTのテクノロジがその後のApple製品、そしてインターネットに貢献したのは確かだが、市場で売る製品としては大失敗だったと言わざるを得ない。
歴史で「もし」の話をしてもしょうがないが、もし、Jobs氏がSculley氏を採用せず、Appleから追放されずに初期Jobs流を貫いていたら、今のAppleの姿はなかったのではないかと思う。
ジョブズ最大の功績を分析する
Jobs氏の最大の功績はiPod、iPhone、iPadにより新しい市場カテゴリを3度も切り開き、そこで支配的地位を確立したことだろう(これに、Pixarにより高品質の3Dアニメーション映画の市場を切り開いた点を付け加えてもよいかもしれない)。単なる新製品ではなく、新市場を作り上げた点がすばらしいのだ。多くの偉大な企業は、新たな市場を切り開きそのリーダーとなることでスタートし、その後、規模を拡大していく。しかし、まったく新しい市場カテゴリを短期間に3つ作り上げた例は、少なくともIT業界では思いつかない。