仮想デスクトップの初期費用は物理より安くなっていく--Citrix Synergy - (page 2)

柴田克己

2011-11-07 13:13

「仮想デスクトップの初期導入コストはPCよりも安くなる」

 Templeton氏は、企業における仮想デスクトップ導入においてROI(Return on Investment、投資対効果)や、TCO(Total Cost of Ownership、総所有コスト)の高さは認められつつあるものの、これまで導入初期コスト(購入後1年間の取得コスト)においては、物理デスクトップに比べて仮想デスクトップのほうが不利であり、それが導入の障壁になっていたとする。

 しかし、「その状況はまもなく変わる」とTempleton氏は宣言した。仮想デスクトップの初期コストが物理デスクトップ以上に安価となる要因としては、サーバサイドにおけるストレージやネットワーク、CPUパワーといったリソースの低価格に加え、シトリックス自身が行ってきたアプリ配信技術「FlexCast」の強化や、パーソナライズされた仮想デスクトップ環境の管理を容易にし、必要なディスクスペースを大幅に削減できる「Personal vDisk technology」(8月に買収したRingCubeより取得)の統合などが挙げられるとする。

 今回のSynergyで発表された取得コスト削減のための新たな方策は「HDX Ready System-on-Chipイニシアチブ」である。HDXテクノロジは、ネットワークの帯域幅を削減しつつ、動画や音声などのメディアストリームや3Dアプリケーションなどを、仮想デスクトップ上でより高いパフォーマンスで実行できるようにする同社技術の総称である。今回発表されたこのイニシアチブではNComputingとTexas Instrumentsとの協業により、HDXのフル機能をワンチップ化し、より省電力かつローコストな仮想デスクトップ実行デバイスの商品化を促そうという試みになる。

 NComputingのほか、DellやFujitsu(富士通)、LG Electoronicsといったハードウェアメーカーにリファレンスの提供を行うことが決まっており、「複数のパートナーとHDXチップによる新たな可能性を模索している。来年には、HDXチップを搭載した100ドル以下の仮想デスクトップデバイスが登場するだろう」(Templeton氏)とする。

 Templeton氏によれば、これらの技術革新や新たなイニシアチブにより、デバイスコストやストレージコスト、サーバコストが大幅に削減されることで、仮想デスクトップの取得コストは物理的なデスクトップの取得に比べて25%程度割安になると説明する。さらに、エンドユーザーが個人所有のデバイスを業務にも利用する「BYOD」を実現することでさらにそのコストは下げられると言う。

  • Texas Instrumentsとの協業で実現した「HDX Ready System-on-Chip」のリファレンス

  • HDX Ready System-on-Chipのリファレンスが提供された企業。具体的にどのような製品がどのベンダーから出るかについては今後の発表が待たれる

  • 仮想デスクトップの購入後1年の取得コストは、物理デスクトップよりも安くなるとする

 「従業員の満足度は、会社が買い与えるデバイスではなく、自分が普段使っているデバイスを業務に利用できる環境があることでさらに向上する」とTempleton氏は話す。もちろん、完全なBYODの導入にあたっては、そのデバイスのサポートをどうするかといった新たな課題も生まれるため、このシナリオをうのみにするのは難しい。しかし基調講演後のラウンドテーブルにおいてTempleton氏は「5〜10年程度のスパンで考える必要はあるが、完全なBYODを含むシナリオの実現は可能だと考えている」との見通しを述べた。

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