アドビへの提言--ユーザーに助けを呼びかけるべきだ

長谷川恭久 2011年11月11日 13時14分

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デザインに詳しい長谷川恭久氏が、Adobeへの提言をブログに投稿した。大きな苦しみにの中にいるアドビは、今こそコミュニケーションの窓口を大きく開き、ユーザーに助けを求めるべきだと訴えている。(ZDNet Japan編集部)

 次期バージョンからのアップグレードポリシーの変更Adobe Creative Cloudの発表で、昨日からAdobeユーザーの間から様々な声が発せられています。今年はサブスクリプションサービスの提供を開始し、さらにCloudによって価値を高めようとしているものの、思惑どおりにはいっていないようです。今までは過去 2から3 のバージョンを遡ってアップグレードできたのが、1バージョン前からしかアップグレード価格が適応されなくなるのが大きな原因。今までも利用者の間では「アドビ税」と呼ばれているCreative Suiteですが、今回のポリシー変更でフラストレーションを爆発させている方も少なくありません。

 ここ数年、Adobeのソフトウェア開発サイクルと戦略に疑問をもっている方は少なくないと思います。

 アップグレードすることで機能の数は増えるものの、それに反比例するかのようにパフォーマンスが落ちるCreative Suite。素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供しますと宣言しているCS 5.5ですが、今年の7月にリリースされたOSにも対応がままならないまま、次バージョンへ移行しようとしているのはどういうことなのでしょうか。Museのようなプロジェクトは確かにおもしろいのですが、Creative SuiteのコアにあるDreamweaverやFireworksの改善にリソースを費やすべきではないでしょうか。2年前のOmnitureの買収にしても、戦略といっていってしまえばそれまでですが、10年、20年とアドビという会社の製品を利用してきた利用者からみれば異質な買収であって、これがデザイナーや開発者向けのアプリケーション開発に影響を及ぼすのではないかという不安も生まれると思います。

 こうした不満や心配がアップグレードポリシーの変更によって色濃くなったところがあると思います。

 今後、いち利用者としてやったほうが良いのではないかというアクションが幾つかあります。

CS6の概要を今すぐ発表する

 アップグレードポリシーを発表したのに、アップグレードの目的を示されていないのが大きなギャップを生んでいます。「何出すか教えれないけど、アップグレードしてね!」という態度に見えてしまったところが不満に繋がったと思います。機能デモは幾つか発表されていますが、CS6としての具体的な価値を1日でもはやく提示するべきでしょう。

Q&Aセッションを行う

 FAQページはありますが、Adobeスタッフが利用者へ歩みよって、コミュニケーションをとる場をつくるべきです。TwitterやUstreamといった便利な道具はいくらでもあるわけですから、Q&Aをすること自体は難しくありません。利用者の生の質問に対して、彼等の分かる言葉で返すというのはとても意味があると思います。MAXや主催セミナーがあるまで待つのではなく、日本全国誰でも参加して情報が残るWeb上で行ってほしいです。ニュースを吐き出しているだけの@AdobeCS_jpを利活用するチャンス。

コミュニケーションの窓口をつくる

 日本のAdobeスタッフでブログを立ち上げている方もいらっしゃいますが、日本でも総合的な窓口が必要です。特に今回のような発表があったとき、プレスリリースやFAQだけでは利用者の納得を勝ち取ることはできません。機能の紹介にしても、開発者の意図が分かるような透明化をはかることで「こんな機能いるか?」から「なるほど、そういうことか」という意見に変わることも。

Creative Suiteというパッケージング販売は中止する

 サブスクリプションになることで、Creative Suiteという巨大なパッケージングにして固定セットで売るという意味合いが薄れてきました。様々なエディションをつくって選択肢はつくっているものの、必ず1つは捨てアプリがあるように思えてしまうセット項目では損した気分を与えてしまいます。箱で売るのを諦めてでも柔軟性のないセット販売は中止して、自由な組み合わせができるサブスクリプションを実現してほしいです。

レガシーなリリースサイクルから開放する

 パッケージングから開放されれば、個々のアプリケーションに適したアップグレードサイクルにするチャンスです。例えばDreamweaverようなWeb関連のアプリケーションが1年ごとにアップグレードしているのでは遅過ぎますし、Illustratorが2年ごとに大きな機能を無理矢理積み上げる必要もなわけです。リリースサイクルを個々で組み立てることが出来るのであれば、利用者の声を聞き入れやすくなるかも。

学生は無料にする

 Adobe製品は人気があります。そのため、以前は違法コピーの代名詞としてPhotoshopやIllustratorの名前がよく挙がったものです。よくないことですが、学生のなかには友達とAdobe製品を貸し借りする人も多くいました。しかし、DRMの導入以来、Adobe製品を借りて使うという違法状態は解消されました。その一方で、学生にとってはアカデミックプライスであってもAdobe製品の価格が大きな負担であり続けています。課題のひとつであった違法コピーを解消するだけでなく、学生の課題解決も両立するために、学生は無料にしてはいかがでしょうか。両者は一見、関係ないことのように思えますが、将来ロイアリティの高いAdobeユーザーを育成していくためにもぜひしてほしい試みです。

 新しいCreative Suiteが発表される度に有名クリエーターを招いて派手なプロモーションサイトをつくったり、DEKIMAGAみたいなコンテンツサイトを作っても半年で閉鎖するなど、Adobeのコミュニケーションは短期的なものが多いです。今回のような発表があったときに、自分たちのペースでコミュニケーションがとれるようにするためにも、長期的な視野をもって利用者と向き合って欲しいなと考えています。

 Wikipediaの記事によれば日本には開発拠点がないので、立場が弱いのかもしれませんし、つかえる人材も限られていて厳しいところもあると思います。しかし、だからこそ利用者へさらに近づくための方法を増やして不安を取り除いてほしいですし、βテスト以外でも助けが必要であれば呼びかけるべきだと思います。

ZDNet Japan編集部:本稿は長谷川恭久氏のブログ「could」のエントリ「アドビさんへ3」を一部編集の上、転載した記事です。関連する「アドビさんへ」「アドビさんへ2」もあわせてご参照ください。

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