ヴイエムウェアのイベント「vForum 2011」で、米VMwareの仮想化クラウドプラットフォーム事業担当上級副社長であるRaghu Raghuram氏は、複数のベンダーと共同で新たなネットワーク規格として提唱している「Virtual eXtensible VLAN(VXLAN)」がネットワークに大きな変革をもたらすと説明している。
既存のVLANを拡張したものであるVXLANは、米VMwareや米Cisco Systems、米Intelなどが共同で標準化団体のIETF(Internet Engineering Task Force)に標準として提案している規格。仮想マシンやアプリケーションに、物理ネットワークとは別に、ネットワークIDを付与することができるというものだ。
要するに「VXLANは、ハイパーバイザがコンピュータに対してしたこととほぼ同様のことをネットワークに対して行うことができる」という。「ハイパーバイザがコンピュータにとって有益だったのは、アプリケーションとOSを切り離すことを実現させたから」だ。
データセンターとネットワークには現在、いくつかの課題がある。Raghuram氏は「今日のアプリケーションは、物理ネットワークに緊密に接続されている。それらのアプリケーションを別のデータセンターに移行させる際には、ネットワークのリコンフィグレーションをしなけらばならなくなり、複雑な作業が必要になる」と現状の課題を話す。
今後企業はクラウド対応を進めていくことが予想されるが、その時に「ハイブリッドクラウドであれば、アプリケーションをパブリックとプライベートの両方のクラウドの間で自在に動かせるわけだが、ネットワークIDを維持したまま移行できないのなら、ハイブリッドクラウドの意味がないことになる」と指摘する。
Raghuram氏は「実際、ネットワーク上では仮想化がされていない部分がある。アプリケーションとネットワークは固定されている」と説明する。この状況は「いわば固定電話のようなものだろう。一般的な固定電話では、電話番号は住所と密着しているわけで、引っ越せば、基本的には番号は変えなけばならない。しかし、携帯電話であれば、単一の番号を世界中で使える。つまり、携帯通信事業者は、ネットワークIDと物理ネットワークを切り離している。この手法は、コンピュータネットワーキングでも応用できると考えた」とRaghuram氏は話す。
その上で「つまり、アプリケーションにネットワークIDを付与して、そのアプリケーションがパブリックであれプライベートであれ、世界のどこでも動かすことができるようにする技術、それがVXLANだ」とVXLANの発想をRaghuram氏はこのように説明した。
データセンターの抱える課題は今後さらに深刻化するかもしれないと同氏は警告する。Raghuram氏は「現在のデータセンターでは、稼動しているアプリケーションの多くはVLANに接続されている。データセンター内で複数階層のアプリケーションがあるとすると、ウェブサーバが10台も20台も、そこにある。そこで、それらのトラフィックを切り分ける仕組みがあれば、セキュリティ対策も取りやすいし、帯域幅のコントロールも可能になる」と語る。
だが、これは「物理ネットワークのレイヤでは難しい。結局、ウェブサーバをデータセンターの一部にすべて集約し、アプリケーションはデータセンター内の別の場所に格納するということになる」と話す。このような問題の解決策として、VXLANが極めて有効であるという。Raghuram氏がこう説明する。
「VXLANはL2の切り分けができ、L3のパケットの方にトランスポートしてくれる。実際にはアプリケーションは多方面に分散しているかもしれないのだが、L2のセグメントにあるかのようにみえる。つまり、VXLANは、L2を仮想レベルで展開し、物理レイヤではL3を活用している。となると、アプリケーションは非常にシンプルになる。実際には物理ネットワークの構成になっていても、トラフィックの監視やセキュリティ対策などの作業をも仮想レベルで実行できる」
Raghuram氏は「VXLANは、ネットワーク上のアプリケーションを物理ネットワークから分離することが可能であり、データセンターとネットワークに変革を起こすような技術といえるだろう」とその優位性を語る。「VMwareでは(VXLANという)大きな変革をパートナーとともに先導していきたい。IETFに標準草案を提出しており、標準として認定されれば、この規格はVMware以外のベンダーの製品でも使えるようになる。今後、1年間程度でICTの業界は、この(標準)の方向に進むのではないか」とVXLANが有効な技術であることを強調している。
vForum 2011&VMworld 2011関連記事