SAP、北京で1万人規模のカンファレンス開催--共同CEO、メガトレンド語る - (page 2)

末岡洋子

2011-11-18 12:31

 データの急増は新しくはないトレンドだが、SAPはこれを活用したいというニーズにこたえるソリューションを用意した——「High-Performance Analytic Appliance」ことHANAだ。

 HANAは、データをメモリに格納することで迅速にアクセスできるというインメモリコンセプトを持つアプライアンス。

 McDermott氏は「デジタル経済ではデータの量は18カ月で倍増している」と述べ、「HANAは構造化データと非構造化データの両方から瞬時に洞察を得られる。かつてないスピードだ」と自信を見せた。新しいビジネスモデルのシミュレーションや、マーケットセグメントと価格戦略などをその場で、秒単位で実行できると胸を張る。

 HANAは6月に一般提供を開始し、経過は順調という。ハードウェア側では、Hewlett-Packardや富士通などの7社に加え、中国のLenovoもパートナーに加わった。SAP幹部は会期中、ヨドバシカメラや三井情報などの事例を紹介し、HANAの導入機運が高まりつつあることをアピールした(なお、HANAの最初の導入顧客は野村総合研究所だ)。

 McDermott氏はスピーチの中で、地元中国のミネラルウォーター企業Nongfu Springの例を紹介、HANAの導入により従来の1000倍の速度で自社製品や他社製品の情報を入手し、レポートを生成するなどの可視化を実現、意思決定の迅速化を図ったという。

 McDermott氏はプレス向けの発表会で、「SAPの歴史上、HANAはもっとも急ピッチで成長している製品」と述べ、7億5000万ドル規模が営業パイプラインにあることを明かした。「SAPはこれまでのリレーショナルデータベース(RDB)市場を崩壊するポジションにある」といいながらも、Oracleなどの既存のRDBについては、「われわれにもSybaseのACEなどのRDB製品がある。HANAイニシアティブは既存のRDBのリプレースを目的としたものではなく、新しいものを導入することにある」ともコメントしている。

 約2年半を開発に費やしたHANAが無事に一般提供にこぎつけた後、今後の課題は「規模」だという。SAPはマドリッドのSAPPHIRE Nowで、「SAP NetWeaver Business Warehouse(BW)」がHANAをデータベース基盤として利用できるようになることを発表している。BWは1万6000社に導入されており、これら既存顧客がHANAを導入できることになる。このようなことから、今後は規模も拡大していくと見ており、「HANAの成功は疑いない。確信している」と自信を見せた。

 クラウドでは、コラボレーションを中心にサービスを紹介した。先に買収を完了したCrossgateにより、SAPユーザーが取引先と発注などの伝票をクラウドで直接やり取りし、ビジネスプロセスを拡張できるという。オーストラリアでは、郵便事業のAustralia POSTがCrossgateを利用して国際宅配のDHLとデータをやりとりしているという。

 Crossgateが企業と企業なら、人と人のコラボレーションは5月に正式版となった「SAP Streamworks」がある。StreamworksはSAPのPaaS「River」(開発コード)を土台とするクラウドサービスで、チームやプロジェクトのメンバーが安全にコラボレーションすることで、迅速に、より良い意思決定に導くという。

 この3つのメガトレンドを統合するイノベーションレイヤーをSAPは提供するとしている。これにより、デマンド主導サプライチェーンとリアルタイムでの意思決定が可能になり、「バリューネットワーク全体を最適化できる」とMcDermott氏は述べた。

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