PC時代からクラウド時代に移行するための9つのカギ--シトリックス - (page 2)

柴田克己

2011-11-21 16:03

クラウドへの移行を進める「9つのカギ」

 来日したCitrix Systems シニアバイスプレジデント兼CMO(最高マーケティング責任者)のWes Wasson氏は、2011年上半期の業績ハイライトとして、XenDesktop、NetScaler、技術サービスの各事業分野で高い成果が出たことを強調した。8年前の2003年にはデスクトップ仮想化分野でのビジネスのみだったのに対し、近年のXenやCloud.comの買収によるカスタマーベースの伸びが収益を押し上げたとし、現在ではクラウド分野とオンラインサービス分野が、シトリックス全体の収益の中でそれぞれ19%ずつの割合を占めているという。

Citrix Systems シニアバイスプレジデント兼CMOのWes Wasson氏
Citrix Systems シニアバイスプレジデント兼CMOのWes Wasson氏

 「Citrixは今、クラウド分野でも世界で10本の指に入る企業となっている。今後3〜4年の間に、さらに強化されていくパブリックプラウドの分野で、われわれの製品やサービス、技術を提供できる体勢を整え、業界の変革に取り組んでいる」(Wasson氏)

 Wasson氏は「過去20年において、IT業界の引力はPC(パーソナルコンピュータ)にあり、データとの接続点は、オフィスに設置されたPCに集中していた。来たりつつあるクラウドの時代には、PCはデータにアクセスするための一つの点でしかなくなる。さまざまなデバイスから必要なデータにアクセスできるようになり、ユーザーは環境を気にする必要はなくなる」と、「Personal Cloud」「Private Cloud」「Public Cloud」による「3PC」時代のコンセプトを改めて紹介。変化が激しく、不確実な時代に、企業システムが新たなステージへ移行するためにシトリックスが目指す方向性を「9つのカギ」として紹介した。

 Wasson氏が示した「9つのカギ」は以下の通り。

  1. 人を中心とし、従業員があらゆる場所からコミュニケーションできるようにする。
  2. Windowsアプリとデスクトップを中央で一元管理し、サービスとしてあらゆるデバイスに配信する。
  3. 従業員があらゆるデバイスでセキュアにファイルを共有できるようにする。
  4. HDX技術の全機能を1チップで提供する。
  5. 中小企業におけるデスクトップ仮想化の推進。
  6. 従業員が、あらゆるアプリケーションに、どんなデバイスからでも簡単にアクセスできるようにする。
  7. より多くのITリソースや性能を社外のサービスからセキュアかつ容易に利用できるようにする。
  8. 旧来の方法ではなく、成功しているクラウドサービスを手本にした、画期的なクラウド構築方法を提供する。
  9. どんなサービスでも配信できる仮想化されたサービスデリバリネットワークを構築する。

 2番目と6番目のカギについては、デスクトップとアプリケーション配信の分野で既に高いシェアを持つ「XenDesktop」、iOSやAndroidデバイスに対応するユニバーサルクライアント「Citrix Receiver」といった製品が対応する。また、3番目のファイル共有(データ共有)については、10月に買収を発表した「ShareFile」を核に、他製品との連携や機能強化を進めていく。

 7番目と8番目については、Cloud.comの買収で獲得した「CloudStack」が核となっていく。従来のデータセンター構築とは異なる、企業内クラウドを構築するにあたって必要となる構成要素として、CloudStackの周辺にXenServer、NetScaler、CloudPortal、CloudGateway、CloudBridgeといったシトリックスの製品群が用意されている。CloudStackによる実績としては、北海道大学の研究開発向けクラウドや、IDCフロンティアのクラウドサービス「NOAH」といった、日本国内の事例があることが紹介された。

 9番目のカギは、アプリケーションデリバリアプライアンスである「NetScaler」の機能強化によって実現される。最新の「NetScaler SDX」では、1台で最大40以上のインスタンスを高いパフォーマンスで運用できるとする。さらに、10月のSynergyで発表された「NetScaler CloudConnectors」では、コンテンツ配信事業者(CDN)とシトリックスとのアライアンスにより、NetScalerを利用している企業が、遠隔地への動的なアプリケーションの配信をさらに高速化できるようにする。NetScaler導入企業は、CloudConnectorsのサービスを提供するCDN事業者と契約することで、より最適化された形での遠隔地へのアプリケーションを配信を実現できるようになるとしている。

 Wasson氏は「2015年までには、約700億のアプリケーションがダウンロードされて使われるようになるという調査もある。モビリティの発達により、アプリケーションを含む企業システム全体の管理方法が大きく変化することを考える必要がある。今後はそれが標準となっていく。シトリックスは、3PCがどのような組み合わせでも実現できるよう、技術とサービスを提供していく」とした。

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