日本MS、被災地向け就労支援プログラム開始--若者就労支援は計画上回る - (page 2)

大河原克行 2011年11月28日 12時06分

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 一方、日本マイクロソフトと「育て上げ」ネットが協働で実施してきた「ITを活用した若者就労支援プロジェクト(若者UPプロジェクト)」の成果も発表した。

 同プロジェクトは、2010年1月〜2012年3月まで実施しているもので、無業の若者に対してWordやExcelなどが利用できるITスキルの習得を支援するのが狙い。初年度は、1200人の無業の若者に対する受講を目標としたのに対して、期間中に1527人が受講。計画を27%も上回ったという。

「育て上げ」ネット理事長の工藤啓氏
「育て上げ」ネット理事長の工藤啓氏

 「育て上げ」ネットの工藤氏は、「無業の若者を調査すると、50%がWordやExcelを使ったことがないという結果が出た。こうした人たちがITスキルを習得することで、これまでは捨てていた求人票も就労対象とでき、選択肢が増えた。また、逆に20〜40時間の受講を通じてITを使わない業務に就くことがいいという選択をする若者がでるなど、業務を絞り込んで活動することにもつながった」とした。

 若者UPプロジェクトにおける就労率は45.5%に達しており、目標の30%を大きく上回ったという。

 また、プロジェクト受講者の8割が気持ちが前向きになり、71%の受講者が働くことに自信を持つなど、就労意欲が高まり、肯定的な形での意欲変化があったという。

放送大学教養学部教授 宮本みち子氏
放送大学教養学部教授 宮本みち子氏

 放送大学教養学部教授の宮本みち子氏は同プロジェクトについて、「無業の若者のなかには、家庭の事情などを背景に、ITに関する基本スキルが身についていないケースがある。だが、このプロジェクトに参加した若者の約半数が就労したという成果をあげている点は大きく評価されるものである。日本マイクロソフトがCSRとして支援のために資源を提供したこと、地域若者サポートステーション(サポステ)がカウンセリングや仕事体験などを通じてプロジェクト参加への動機付けを行ったこと、サポステの職員が指導のためのマニュアルを作り、自ら指導者として準備を行い、適切で有効な指導ができたこと、また、厚生労働省のキャリア支援室などが背後から支援したことが成功の要因である」とした。

 同プロジェクトに参加している地域若者サポートステーションは、全国24カ所にのぼるという。

 2年目となる今年度の受講者目標は4800人としており、現時点で約60%となる2867人が受講。すでに48%が就労につながっているという。

 今回のセミナーで明らかにされた成果については、公共経営・社会戦略研究所の統括研究員である塚本一郎氏(明治大学教授)が説明した。

 これは、社会的なインパクトなどを「社会的投資収益分析(SROI分析:Social Return on Investment Analysis)」を用いて計測したもの。これによると、純便益額は初年度で5256万8000円になり、受講者ひとり当たりの純便益額は7万3419円になるとした。プロジェクト全体における5年間での純便益額は2億3149万8000円に達すると試算した。

公共経営・社会戦略研究所 統括研究員で明治大学教授の塚本一郎氏
公共経営・社会戦略研究所 統括研究員で明治大学教授の塚本一郎氏

 「総便益で総費用を割った社会的投資利益率(SROI)は1年目で5.6倍となり、5年間累計で21.28倍になった。これは高い水準であり、プロジェクトの有効性を実証したことになる。ITリテラシーの向上によるデジタルデバイドの解消、若者の雇用が促進されることによる税収の増加、社会保障費の削減、民間の資源やノウハウの活用などのインパクトがある」などとした。

 「育て上げ」ネットの工藤氏は、「税金の使途について国民の厳しい目が集まるなかで、3年目以降も継続できる状況を作るにはどうしたらいいかを考えてきた。また、ITを教えられる講師を確保するにはどうしたらいいかという課題にも取り組んできた。プロジェクトの成果を社会的効果として数値化し、可能であれば貨幣換算できるような形で示したいと考えた。来年3月以降も、いままで以上に価値を提供し、継続できるような形で取り組んでいきたい」と語った。

Jean-Philippe Courtois氏
Jean-Philippe Courtois氏

 一方、セミナーで挨拶したMicrosoft InternationalのPresident、Jean-Philippe Courtois氏は「震災後、初めて日本を訪れたが被災の状況を確認することもできた。この間、マイクロソフトでは文科省とコラボレーションを進め、各拠点の放射能レベルの情報提供で協力してきた。これはわずか2日間で構築し、文科省の発表から1時間後に情報を広く公開できる仕組みができた。また、トヨタと共同でBing MapsとWindwos Azureを連携させて通行できる道路の情報を提供した。一方で、25年間に渡って日本で築き上げたパートナーシップを通じて、27社のハードメーカー、ソフトメーカー、情報通信サービス企業とともに、3週間で1000台のPCと、Office 365やLyncなどを提供し、被災者がコミュニケーションを取れるようにもした。日本の経験を、今後の世界の危機的状況を解決するための手本となることに期待したい。将来の雇用のうち、3分の2は現在存在しない職種であるといわれている。そのためには新たなスキルが求められており、マイクロソフトはそうした観点からも人材育成を行っていく」などと語った。

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