新たな思想「ソーシャルエンタープライズ」とは--SFDC ベニオフCEOが熱弁

大川 淳 2011年12月15日 12時02分

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 セールスフォース・ドットコムは12月14日と15日の両日、東京・港区で「WELCOME TO THE SOCIAL ENTERPRISE」をテーマにしたイベント「Cloudforce 2011 Japanを開催した。

 初日の基調講演には、米Salesforce.comの会長兼CEOであるMarc Benioff氏が登壇、FacebookやTwitterに代表されるソーシャルメディアとクラウドを有機的に結びつけ、企業がITを有効活用できる新たな思想「ソーシャルエンタープライズ」について熱弁をふるった。また、同社とNTTコミュニケーションズは12月14日、東京データセンターの稼動開始も発表している。

Marc Benioff氏
Marc Benioff氏

 Benioff氏は「今、これまでに見たことのないようなソーシャル革命が起きている」と語る。

 エジプトやチュニジアなどの中東で政権が交代したきっかのひとつに、FacebookやTwitterの存在があった。また、米国では9月から経済界に対する抗議運動、いわゆる「Occupy Wall Street」(ウォール街を占拠せよ)が始まった。この運動もソーシャルメディアを媒体にしてデモが世界各国へと広がっていった。英国では今夏、警察官による黒人男性の射殺をきっかけとして暴動が発生。暴動がわずか4日で英国の各都市に拡大していった背景には、ソーシャルメディアの存在が指摘されている。

 「従来とは異なり、ソーシャルメディアによって個人の呼びかけが素早く多数の人々に伝わり、世界中でさまざまな連帯が実現し、社会を劇的に変化させた。これらは特定のリーダーがいたわけではなく、リーダーなき変革が起きた」(Benioff氏)

Neil Young氏
Neil Young氏

 「テクノロジーの進化が、世界中で社会に大きな影響を及ぼしている。我々はこれをよく理解するために、過去を振り返る必要がある」とBenioff氏。1970年、米オハイオ州のケント州立大学で開かれたベトナム戦争に反対する集会で、州兵が非武装の学生に発砲した事件のことに言及した。今回のイベントでは、シンガーソングライターのNeil Young氏が招かれており、Young氏は同大学での事件を受け悲しみと怒りを表現した楽曲を世に出した。

 「70年にはTwitterなどなかったが、メッセージ性の強い音楽があり、人々の心を動かした。今では新しい技術によって社会の間違いを正したり、大きな動きをもたらすことでできる」(Young氏)

 ソーシャルメディアは社会に多大な変化をもたらすようになったが、それだけではない。「多様な組織や企業も大きな影響を受けている。企業はソーシャルメディアを取り込み、活用すべきだという動きが出てきている。いまやソーシャルメディアのユーザーが全世界で17億人に達し、電子メールのそれを超えている。利用時間も増えており、ウェブ利用の端末もパソコンからモバイル機器への移行が目立つ。企業もソーシャルメディアを積極活用するよう、変わらなければならない」とBenioff氏は説く。

 一般消費者はソーシャルメディアを利用しているのに、企業は「ソーシャル化」していない。この差異をBenioff氏は「ソーシャルデバイド」と表現した。企業はこのデバイドを埋めなければならず、そのためには3つのステップがあるという。まず、データベースを進化させ、顧客のソーシャルプロファイリングを整えること。二つ目は、社員のソーシャルネットワークの構築。三つ目は、顧客や製品のソーシャルネットワークをつくること。これらを進行させることで、ソーシャルメディアによって経営を変容させることが可能になるというわけだ。

 同社は5月にトヨタ自動車と提携、クラウドサービスのSalesforce Chatterを活用したソーシャルエンタープライズのしくみである「トヨタフレンド」の構築を図っている。「トヨタフレンド」は、人と自動車、販売店、メーカーをつなぐソーシャルネットワークサービス。トヨタの顧客が自分の車やカーライフに必要な情報にあらゆるデバイスからアクセスできるソーシャルネットワークを提供する。トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男社長はビデオメッセージを寄せ「Benioff氏からソーシャルネットワークの話を聞かされ、こういう世界があるのだと感じ、人生が大きく変化した。人と人のコミュニケーションに車が入ってくる。トヨタフレンドを介して、人と人、人と車、車と車がつながるようになる可能性を感じている」とした。

 Benioff氏は「企業はソーシャルメディアで新たな価値を創造し、顧客と良好な関係を築くことができる。トヨタフレンドは、その良い事例となるだろう。豊田社長はSalesforce Chatterで社員の声を直接聞き、コミュニケートしている。また、トヨタはディーラーとの関係を再考しているが、それにはディーラーがソーシャルネットワークに統合されていくことがカギを握っている」と述べ、ソーシャルエンタープライズの重要性を強調した。

 この日、セールスフォース・ドットコムの東京データセンターが稼働開始したことが発表された。同センターは、NTTコミュニケーションズが保有するデータセンターを使用し、マルチテナント・クラウドコンピューティング・アーキテクチャとNTTコミュニケーションズのエコ指向の運用環境により、二酸化炭素排出量の最小化を図っているという。

 Benioff氏は、「我々は日本に強くコミットしている。今回の大震災からの復興にも深くかかわりたい。今回、日本にデータセンターを設けることができ、日本へのコミットがさらに進展した。このデータセンターは日本で最も高度なものであると考えている。トランザクションあたりの二酸化炭素排出量が非常に低く、経済性にも優れている。日本企業はこれを役立てることができるだろう」と語った。

原口一博氏
原口一博氏

 同社の早くからの顧客である日本郵政 取締役兼代表執行役副社長の坂篤郎氏は、「日本にデータセンターを置くのは、安全性、安定性が重視されていることを示している。当社は多数の顧客にサービスを提供しており、これを途切れさせるわけにはいかない。国内にデータセンターがあれば安心感が高まる」と語った。また、NTTコミュニケーションズ副社長の牧貞夫氏は「大震災があったにもかかわらず、日本がデータセンターのサイトとして選ばれ、予定通り12月に稼動開始となったことをうれしく思う。今後もパートナーとして、セールスフォースのグローバル展開に協力していきたい」と述べた。

 衆議院総務委員長で元総務大臣の原口一博氏は、「クラウドは独占を排除できる能力がある。エネルギー供給の体制は独占的になっているが、これをクラウドにより変えたい。教育にもクラウドを活用したい。大震災で大きな被害があった日本にデータセンターができるのは、喜ばしいことだ」と語った。

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