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アナリティクスについて経営者が知っておかねばならないこと

Kishore Swaminathan (Accenture)

2011-12-28 09:00

 改めて「ビッグデータ」という言葉を持ち出すまでもなく、企業内外に偏在するデータから企業の戦術や戦略に役立つものをどう引き出すか――。その課題に対する取り組み方を米Accentureのチーフサイエンティストであるキショール・S・スワミナタン氏がまとめている。

 アナリティクスが価格設定、需要予測、ターゲット・マーケティング、サプライチェーン最適化、CRM、HRなど、企業の各分野で付加価値を生み出していることは各種の事例研究で確認されている。しかし私は、アナリティクスを単に投資収益率(ROI)を高める技術だととらえるのは間違いであり、企業内議論の進め方や意思決定の方法を根本的に変える転換現象であると考えている。何故そう考えるかについて、具体的な例を挙げて説明したい。

 羽根と石を同じ高さから同時に落としたら、どちらが先に地面に着くだろうか。こうした疑問はかつて哲学者が答えを出すものと考えられていた。アリストテレスは、石の方が重いので、落下速度が大きく地面に先に着くと考えた。アリストテレスの頭の中で生み出されたこの理論に異を唱える者はその後長い間出てこなかった。しかし、16世紀になってガリレオが、誰しもが納得するような実験を行ってアリストテレスの説は間違っていることを証明し、物理学の問題を実証的に解決するという基礎を築いた。

 実証に基づく科学的手法が物理学の基礎になったと同様の過程をたどって、企業内にもやがてアナリティクスによる実証主義が浸透し、現在の経営手法の多くが姿を消すであろう。

Kishore Swaminathan氏
Kishore Swaminathan氏

あいまいな意思決定

 私は最近、「事業所の社員は全て自席を整理整頓すること、またその点検を隔週金曜日に行う」という旨の社内通達を受け取った。私は通達の根拠が知りたかったため、クリーン・オフィスが生産性の向上につながることを示すデータがあるか担当部署に聞いてみた。

 私の質問ははぐらかされ、クリーン・オフィスはクライアントに良い印象を与えるからだとの回答が返ってきた。私はひるまず、整理整頓された事務所を歩くクライアントが当社への発注量を増やすか、あるいは好印象を他の方法で具体的に表明していることを示すデータがあるかを聞いてみた。このような社内のやりとりを知った上司は予想通り、こんなことで社内を敵に回して徹底抗戦するつもりかと聞いてきた。

 私がこの例を引き合いに出したのは、企業の意思決定が、理屈は通っており、またその意図するところも理解はできるものの、何の根拠もない思い込みによって日常的に行われていることを示したかったからである。これは実証的証拠に欠けるという点において、アリストテレスの説となんら変わりはない。価格設定や顧客セグメンテーションなど非常に専門的な機能は高度なモデルや実データをベースに行われるかもしれない。しかし、アナリティクス導入による長期的効果は、企業のあらゆるレベルでデータに基づいた意思決定を行うという文化を徐々に浸透させることにあると私は考えている。

 要するに、企業が提案や意思決定を行う際はその軽重に関わらず次の質問に満足の行く答えを出すものでなければならない。「これが本当だと思っているのか、それともそうだと知っているのか」(公式のごとく簡単なこの質問方法はハラーズ・エンタテインメントCEOのゲイリー・ラブマンが最初に言い出した)。

 先進的でアナリティクスを活用する、いわば未来の企業は、その行動様式や運営において次の5つの主要な面で現在の企業とは異なる姿を見せるであろう。

高い分析能力

 データは諸刃の剣である。適切に使用すれば、確かで正しい判断につながるが、使い方が不適切であれば、同じデータであっても判断ミスにつながることがある。のみならず、データを活用したという思い込みにより被害が拡大し企業にとって高くつくという結果を招来しかねない。具体的な例を見てみよう。

 リアルタイムでデータにアクセスできる人は、意思決定もリアルタイムに行いたいとの誘惑に駆られる。小売業者を例に考えてみよう。全店舗のレジから売上げデータや倉庫の在庫状況にリアルタイムでアクセスできれば、直ちに販促を打ち、それに連動させて並行的にサプライチェーン管理を行えば良い結果を生むと考えるかもしれない。

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