クライアントはマルチデバイス時代に突入--日本IT市場予測10項目(前編) - (page 2)

田中好伸 (編集部)

2011-12-30 16:47

3.クラウドサービスがITの“現代化”を加速させ「モダンPaaS」を創生する

 「第3のITプラットフォーム」の発展は、クライアント/サーバ(C/S)システムといった伝統的なITアーキテクチャからクラウドサービスへの変革を加速させるという。この時にサービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づいた、ITの“現代化(Modernization)”を実現することが重要と指摘している。ITの現代化とは、「ITの構築」といった手段の目的化ではなく、業務効率の向上といった経営上の目的を達成することを優先したIT投資を指している。

 つまり、伝統や過去の実績に縛られることなく、HTML5やビッグデータといった新しいアーキテクチャや技術を積極的に採用することが求められるという。過去の資産を単純に廃棄するだけでなく、現代化によって活用することも重要になると説明している。

 クラウドサービスではAaaS(一般的にはSaaS)、PaaS、IaaSで構成される。今後AaaSとIaaSはPaaS指向が強くなるとみている。AaaSでは迅速性と容易性を維持しながら、アプリケーションのカスタマイズ性が強化され、PaaSへと変化していくという。現在AaaSで提供されている多くのサービスも、市場環境の変化にあわせたカスタマイズが求められるようになり、AaaSからPaaSへの変化が進むと説明する。

 一方のIaaSはインフラストラクチャに焦点があわせられており、データベースやアプリケーションの開発・実装、運用はオプションとなっている。IaaSは今後、特定のシステム領域に最適化され、アプリケーションの開発生産性と運用性を追求したプラットフォームの提供へと発展していくとみている。この動向は2012年に具現化するとも予測している。

4.ハイブリッドクラウド時代を迎え、クラウドサービス向けIT市場のフレームワークが形成される

 この数年間で多くのITベンダーが、自身でクラウドサービスを提供するとともに、パートナー企業やユーザー企業がクラウドサービスを実現するためのハードウェアやソフトウェア、サービスを積極的に投入してきた。このことから、IDCでは多様化するクラウドのニーズを満たすためのラインアップが2011年までに出揃ったと表現している。

 一方、クラウドサービス事業者が使用しているサーバは、汎用的なサーバや自作またはカスタマイズしたサーバだったが、クラウドサービス需要の増加と多様化に対応することが難しくなり、運用効率性が低下してきていると分析している。この事態は、運用効率がサービスコストに直接跳ね返ってしまう事業者にとっては致命的である。このことから、クラウド型データセンターに特化した、より高密度で省電力なサーバやストレージを採用して、運用の効率性を高める動きが顕著になると予測している。

 クラウドサービスの採用が加速する中で、パブリックとプライベートという配備モデルが異なる2つのクラウドと、減少していくものの当面は大部分を占めるとみられる従来型のオンプレミスが混在するのは明らかだ。クラウドでも、パブリックであればIaaSやPaaS、AaaS、プライベートであればオンプレミスや外部のデータセンターに構築するなど多様化し、ヘテロジニアス化が進んでいくと表現。2012年には、これらをいかにハイブリッドで統合管理できるかに注目が集まり、新たな製品やサービスが登場すると予測している。

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