講演の中でもLiveShapeによるデザインの様子がビデオで紹介されたが、カマボコ板のような基本形がみるみるうちにコンパクト型デジタルカメラの形になっていく様子は来場者にも感銘を与えたようだった。基本的にはマウスによるオペレーションのみで、画面上に表示されている立体の形状を調整していくだけであり、3D CADという言葉の印象とはずいぶん違ったグラフィカルな操作に見えたのが印象的だった。
なお、茂呂氏は「3D CADツールで表現しやすい線や形状にデザイナーの発想が制約されてしまう危険はないのか?」という質問に対して「確かにその懸念はある」と答えた上で、「以前のV5までのツールではデザイナーのイメージ通りの形状を画面上にそのままの形で再現できず、妥協する場面もあったが、V6のLiveShapeでは簡単な操作で思い通りの形状を作り出す能力がさらに高まっているため、V6に移行したことでそうした問題は解消されると期待している」と語っている。実際、以前はまず手描きのドラフトを描いていたデザイナーも、V6のLiveShapeでは下書きなしでいきなりLiveShapeで思い通りの形状を作成できるようになっているのだそうだ。
また、Renderingの機能強化により、デザイナーがLiveShapeで作成した「3D Sketch」(3次元スケッチ)がそのままフォトリアリスティックなイメージに変換できるようになったという。もちろん従来から同様のことはできたが、レスポンスの早さと得られる画像の美しさが進化しているのだそうだ。その結果、従来はデザイン案が固まってからレンダリングを行なって確認、という流れだった作業が、現在はデザイン作業中に随時レンダリングイメージを確認する、という形でより広範にレンダリングを活用できるようになったという。
こうしたツールの進化によってデザインの作業がどう変わったのか。茂呂氏は、デザインの開始から完了までの期間はV5の時代とほぼ同じだが、モデリングに要する時間が大幅に短縮されたことで、デザイナーがデザインの検討を行なう3D Sketchの期間がより長く取れるようになったという。デザイナーにとっては本質的な作業により長い時間かけることができるようになっているわけで、当然製品の品質や魅力の向上に繋がっていく。
一般的にはデザイナーのためのツールとは思われていないCATIAをデザインのための導入するという決断には勇気も必要だったと思われるが、V6で達成された成果を見れば確かに正しい決断だったのだろうと思われる。既に10年以上の3D CAD活用経験を積んだニコンのデザイン部門は、従来型の紙ベースのスケッチからデザインを仕上げるのに比べれば圧倒的なアドバンテージを獲得しており、容易には追いつけない先進性を手に入れていることになる。
ダッソー・システムズは自社の製品/技術に関してはあまり声高なアピールを行なっていないが、ユーザー企業の業務の本質的な部分に進化をもたらしているという点は誇るに足る大きな価値を作り出していると評価できるだろう。
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