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ハッカーマインドでいこう!後編--求められる企業文化の変化

富永恭子 (ロビンソン)

2012-01-09 11:00

 前回、楽天 開発部アーキテクトグループの技術理事であり、12年の歴史を持つOSS勉強会「カーネル読書会」を主宰する吉岡弘隆氏にオープンソースとしてのLinuxが果たした役割について語ってもらった

 後編でさらに吉岡氏は「それを実現したのはハッカーマインドであり、今の日本企業が持つべきもっとも重要な要素だ」という。

震災が掘り起こした日本のハッカー精神

 Linuxのオープンソースとしての始まりは、20年前、フィンランドの大学生だったリーナス・トーバルズ氏が、インターネットに公開したOSのソースコードを、たまたま他の誰かが改良したのがきっかけでした。ですから、最初から精密な設計のもとにプロジェクトが始まったわけではなく、当時21歳の若者だったリーナスが「世界制覇」を目指していたわけでも、現在のような躍進を予見していたわけでもありません。偶然がきっかけとなって生態系のような改良の循環ができ、その過程でコンフリクトが生じたものは微調整され、さらにリーナスの人柄もあり、発展してきたものだといえます。

 そしてそれを実現したのは、世界中の大勢のハッカーたちでした。ここでいうハッカーとは、マスコミがいうところのコンピュータネットワークの犯罪者という意味ではなく社会貢献する「善玉」のハッカーのことです。彼らは、自分が持っている技術を使って世界を変えたいと考えています。とくに世界では、そうしたハッカーが積極的に活動しています。

 日本においては、個人としてプログラミング能力が高い人はたくさんいますが、会社や組織、社会を動かすという意味でのハックは、これまで必ずしも多くありませんでした。それは日本の大手ベンダーも同様で、そこに所属する個人のレベルではいくつかの例が出てきているものの、組織としてそれを理解した上で、コミュニティとがっぷり四つに組み、マスコラボレーション、あるいはウィキノミクス的なものに寄与できているところは、これまで残念ながらほとんどありませんでした。

 しかし、今年の3月に起きた東日本大震災が、それまで潜んでいた日本のハッカーたちを喚起する大きなきっかけになりました。その例として、東日本大震災直後にNTTデータの社員である三浦広志さんが合同会社Georepublic JapanのCEOの関治之さんらと立ち上げた震災情報集約サイト「sinsai.info」があります。また、Googleの及川卓也さんの呼びかけで始まった震災からの復興を支援するための復興アプリ開発支援コミュニティ「Hack For Japan」もその一つです。どちらのプロジェクトも企業を超えてIT開発者が活動に参加しています。これはまさにハッカーの世界です。

 これらは、むしろ例外的にオープンソースに適応している組織の事例だといえます。しかし、オープンソースを理解する人たちがどんどん育ってきて、組織の中にオープンソースの価値を個人として理解している人が複数人いれば、組織を横断して会社の動きも変えてしまうことが起こるのだと予感させる事例でもあります。

 彼らのようなハッカー精神を発揮した文化を広げていく動きが、震災以降、顕在化してしていることは誇れることであり、日本にとっても大きな希望になっていると思います。こうした活動の芽をこの先どのように広げつつ、持続していくかがとても大事です。

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