オープンソースと上手な関わり方ができる会社が生き残っていく
私は、これまでカーネル読書会やオープンソースコミュニティでの交流の中で、マスコラボレーションやコミュニティによる価値の創造に方法論があることを理解しています。また、インターネットのサービスを作っている企業のほとんどもそれを理解しています。たとえばそれは、FacebookやTwitterであり、Googleですらそうです。
「Googleですら」というとたいへん失礼ないい方に聞こえるかもしれませんが、彼らは非常にProprietary(独占的)でClosed(閉鎖的)で、外部にテクノロジをあまり出さないというイメージがあります。しかし一方では、「Android OS」や「Chrome OS」を作り、スクリプト言語である「Python」に貢献するなど、オープンソースを自分たちのビジネスに積極的に組み込もうとしているのです。
いずれにせよ、インターネットのサービス会社は、オープンソースを無視して真空地帯で生きていくことはできないので、オープンソースに何らかの形で関わっています。ただし、その関わり方に上手と下手があるわけです。
私は、オープンソースと上手な関わり方ができている会社が、結果として残っているのではないかと思います。つまり、日本のインターネットサービス会社が世界に進出していくためには、単にオープンソースに関わるだけでなく、さらに上手に関わるような企業体質にならなければならないと考えています。
ハッカーマインドを持もつ人たちを増やしていくためには、多くの人がその価値観に目覚めることが必要であるとともに、受け皿となる企業の考え方も変わらなければなりません。そのためには、オープンソースとの関わり方を会社の内部から変えることが一つのチャレンジとなります。新しいことに挑戦し、たとえうまくいかなかったとしても、そこから何かを学ぶという価値観でビジネスを行わない限り、何も起こりません。過度のコンプライアンス順守のために、起こってもいないことを心配して何もしないよりは、失敗を恐れず行動するべきです。まず、行動を起こし、社会的なコンフリクトが起きたら、そのとき合意を形成すればいいのです。
それこそがハッカーセントリックな企業文化を作ることだと私は信じていますし、そのために会社の中にハッカー指向の価値観をどうやって育成していくかが課題だと思っています。それは私が所属している楽天も例外ではありません。それができなければ、我々が望んでいるような「インターネットサービスでNo.1企業になる」ところまで行き着くことはできないと思っています。