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記事まとめ「テレワーク常態化で見えたこと」

人に「何となく押し切られない」ための5つのマインドハック - (page 4)

高橋美津

2012-01-11 09:00

「一貫性」のワナ

 年の初めに「今年中に絶対にやり遂げること」のような目標を決める人もいると思いますが、その目標達成の可能性を高める心理学的に有効な方法があります。まず、心の中で思うだけでなく、その目標を実際に「書き出す」こと。そして、その目標を達成するという決意について、身近な多くの人に「宣言」することです。

 人は、自分について「一貫性を保ちたい」「一貫性があると周囲の人に思われたい」という傾向を持っています。そのため、一度あるものごとに対する立場を表明すると、それ以降の判断について、既に表明済みの立場に合わせようとしていきます。社会心理学ではこれを「コミットメント」と呼んでいます。

 私は最近、とても身近なところで、この「コミットメント」を利用している事例を実際に体験しました。「スポーツクラブ」への入会時のことです。そのクラブでは、入会後にすぐオリエンテーションと呼ばれるプログラムがあり、そこで設備の利用方法などの説明を受けます。さらに、その時間の中で、プロフィールシートに「自分は、このスポーツクラブに通うことで、3カ月後にどのような状態になっていることを目指します」という宣言を書かされるのです。

 ここで、具体的に宣言する内容は「週あたり何回クラブに来る」とか「体重を何キロまで減らす」といった数値目標です。また、この宣言にはインストラクターも目を通し、「わかりました。あなたは、3カ月後に○○になるのですね。一緒にがんばりましょう!」と個別に声をかけられます。

 後で知ったのですが、スポーツクラブに入会した人が、途中で気が変わって解約するのは「入会後3カ月以内」が最も多く、逆に3カ月以上会員で居続けた人は、その後も継続して月会費を払ってくれるケースが統計的に多いのだそうです。つまり、「最初の3カ月」での心変わりを防ぐための「コミットメント」として、「3カ月後の目標」を紙に書かせる時間を設けているというわけです。

 コミットメントに関する他の面白い例としては、「商品を購入する前の比較検討時よりも、購入後のほうが商品カタログを見る時間が長くなる」というものがあります。普通に考えれば、商品の比較検討のためにカタログを集めるわけですから、購入前のほうがカタログを見る時間が長いはずです。

 しかし、複数の商品の中からどれかひとつに決定して、それを購入するという行為は、自分の中に不安も引き起こします。「実は、最後まで迷ったもうひとつの製品を選んだほうがよかったのではないか」「自分の選択は正しかったのだろうか」といった疑念がわいてくるのです。しかし、既に商品は購入してしまった後です。この矛盾を解消するためにどうするかというと、「これを買ってよかったのだという合理的な理由を、自分の中で補強するために、購入した商品のカタログで強調されている新機能や、同じ商品を買った他の人の好意的な評価を、多く見たいと思う」のです。

 スポーツクラブでの目標、商品を買った理由の補強、あるいは「禁煙」など、自分の意思で行うコミットメントであれば、問題はありません。しかし、この傾向を自分たちが有利な立場になるために、あるいは自分たちの利益になるように利用しようとする相手に対しては注意が必要です。

 例えば、ある商品の限定モニター募集で「応募にあたっては“この商品が手に入ったら実現したい自分のライフスタイル”についての200字程度の作文を添えてください!」という要項がある場合はどうでしょう。もしモニターに外れたとしても、一度コミットメントした「商品を手に入れた後の自分」のイメージは、その後もしばらく自分の中に残り続けるはずです。

 また思想やビジネスについて、特定の目的を持ったグループでは、新たに加入したメンバーに対して、まず最初に「○年後に、仲間と一緒に実現したい自分の夢」といったものを口頭、書面で発表させるという「儀式」を行うケースも多く見られます。また、この場合、入ったばかりのメンバーにとっては、そのグループ自体の情報が少なく「不確定な状況」であることも忘れてはいけません(「周囲の人と同じこと」をしてしまうワナ)。このメンバーがその後、やはりこのグループは居心地が悪いと感じて脱退したいと申し出た際に、最初のコミットメントを武器に圧力をかけるようであれば、相手はその力を十分に理解していて、それを自分たちのために利用していると考えられるかもしれません。

 ものごとに対して「自分の立場を決定する」というのは、あらゆる局面で必要なことです。しかし、その行為には、後の自分の判断を方向付ける「強い力」があることも、同時に自覚しておき、慎重になるべきでしょう。

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