だから経営は破綻する--人間に備わる「現実を見ない」能力

飯田哲夫 (電通国際情報サービス) 2012年01月24日 08時00分

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 さて、最近Facebook上でもシェアされているこの文章、もともとは2ちゃんねるで2009年に紹介されてから定期的に話題に上っているようである。自分は遅ればせながら今回初めて接したのであるが、単に面白い話題として片づけるにはもったいない。


こんちには みさなん おんげき ですか? わしたは げんき です。
この ぶんょしう は いりぎす の ケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか
にんんげ は もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば
じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて
わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす。
どでうす? ちんゃと よゃちめう でしょ?
ちんゃと よためら はのんう よしろく

 こうした認識の補正能力については、こちらのブログに纏められているように、結構前から研究されているテーマのようである。ただ、先の文章にある通りに、ケンブリッジ大学で本当に研究されていたのかは定かではない(まあ、文章は「ケブンッリジ」 なので、勝手に解釈するなということかもしれないが)。

 また、ひらがなだけだから、あるいは良く使う短い単語ばかりだから読めるんだ、という指摘も事実である。それでも人間の持つ認識の補正能力は興味深い。何故興味深いのかといえば、これが意識的なプロセスではなく無意識的なプロセスとして為されるからである。

 プログラミングだと、何回見直してもバグの原因箇所が見つけられないとか、何度もテスト結果の確認を繰り返したのに、結局またバグが出てしまうなんてことがあるが、このあたりの背景には人間に備わっている認識の自動補正能力が関わっているのだと思う。この点において、ちょっと時間を置いてみたり、第三者の助けを借りることの意味は大きい。

 ちょっと話題は変わるが、つい先週破綻したEastman Kodakは、典型的な「イノベーションのジレンマ」であると言われている。イノベーションのジレンマというのも、ある意味において無意識的なプロセスとして事業を破綻に追い込むことを指す。つまり、自分たちの顧客、あるいは自分たちのビジネスに良かれと信じて、結果的に新しいテクノロジやビジネスモデルの波に乗り遅れ、事業を破綻させてしまうからだ。

 Eastman Kodakであれば、フィルムを使ってくれている顧客を大切にし、それとカニバリズムを起こすビジネスに加担することはためらわれる。結果、デジタル化の波に乗り遅れて事業そのものが破綻に至る。先ほどの文字認識とは全く別次元のものであるが、人間に本来的に備わる補正能力が過剰に反応したものだろうと思う。

 つまり、ちょっとした誤謬は無視しても構わないので、人間は本源的な能力としてそれを自動補正してしまい、その存在にすら気づかない。ただ、それが過剰に反応すると、気付くべき誤謬まで気づくことが遅れてしまう。

 さらには、そこに人間の自己防衛本能が働くと、それが手遅れになってもまだ気づかない。そして、企業においてはこれが集団心理となって、気付いた人も、その事実を無視することが正であると考え、組織としての認識補正が働いてしまう。

 かつてカエサルは「人間は見たい現実しか見ない」と言ったそうである。人間の認識能力というものは、文字認識から現実認識まで、高度な補正能力を有しているが故に、常にそれを疑う仕掛けを考えておかなくてはならない。マネジメントとはまさにそんな仕掛けのことを言うのかもしれない。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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