F5、2012年はセキュリティ強化で高成長を目指す - (page 2)

大川 淳

2012-02-03 16:03

トラフィック管理技術の高度化が多様な利点をもたらす

 CTOのTriebes氏は、「アプリケーション・デリバリ・ネットワークを発明したのはF5だ」と自信を見せる。

 「当社をロードバランシング企業と呼ぶ向きがある。たしかに、初期はロードバランシングを手がけてきたが、2004年に大きな変革があった。プロキシベースのアーキテクチャに移行したことで、ネットワークに対しサーバからのオフロードやセキュリティ、可用性の向上など、多様なサービスをプロキシベースで提供可能になった。これらが高い付加価値をもたらす」とTriebes氏は言う。その付加価値をもたらすのがTMOSだ。

 F5は「CMP(クラスター・マルチプロセッシング)」という技術を導入している。これにより、強まる一方のパフォーマンス向上の要望に、ほぼ追従したかたちで応えられるという。それは「TMOSのアーキテクチャに、TMM(トラフィック・マネジメント・マイクロカーネル)と呼ばれるコアを持たせたからだ。これによりコアのカーネルプロセスで仮想化を実現でき、セキュリティや最適化など幅広いサービスを提供することが可能になった。CMPがTMOSを拡充し、高い競争力を確保する」と、Triebes氏は述べた。

Karl Triebes氏
Karl Triebes氏

 今後の最重点項目のひとつはセキュリティ分野だ。ここでは、アプリケ−ショントラフィック管理システム「BIG-IP」が軸となる。Triebes氏は「ウェブサイトの脆弱性を狙う攻撃が増えており、なかでも情報漏えいが最も深刻な問題となる。この種の不正アクセスに対しては、IPS/IDS、ファイアウォールなどの従来型の対策では防御し難くなってきている。アプリケ−ション層に照準を合わせた製品が必要になってきており、「BIG-IP ASM」はまさにそれが可能なのだ。アプリケ−ション自体を標的にした攻撃に強い」としている。

 同社のセキュリティ強化策の柱としては「Project Topaz」がある。これは、アプリケ−ション、プロトコル、ネットワークまでを包括的に防衛するためのフレームワーク。F5は「Project Topazでは、セキュリティのための一元的な管理性を確保でき、攻撃を目的にネットワークに到達するすべてのものを食い止めることが可能になる。多様な攻撃に対する防御を、高性能な管理しやすいシステムにまとめ、可視性も高くできる。さまざまツールを扱う他のベンダーとも連携し、F5の管理ソリューションの一環として提供していきたい」(Triebes氏)と考えている。

 一方、サービスプロバイダーや通信事業者向けの施策としては、「DPI(ディープ・パケット・インスペクション)」が注目される。Triebes氏は「DPIはコンテンツアプリケ−ションを分類し、トラフィックを振り分けることができる。インフラの負荷を軽減できる。さらに重要なのは、今後モバイル領域でLTEが普及していくからだ。現状では、事実上2つのネットワークがあるわけだが、LTEでは統合されることになり、遅延率が問題となる。DPIはその管理に大きく貢献できる。さらに、トラフィックの重要性の高低を判別できるため、セキュリティ対策にも活かせる」と語った。DPIは体験版が2012年度第2四半期に配布される予定だ。

 トラフィック管理や仮想化などの技術が、IT環境に不可欠であるのは論を待たない。その目的は、コスト低減化、効率化、可用性の向上などが主だったが、最近ではセキュリティ対策、BCP/DR(事業継続計画、災害対策)などにも有用であるとの主張や事例が出てきた。ベンダー各社も自社製品の優位性を説く際、これらの諸点を訴求することが目立つ。

 F5 AGILITY Tokyo 2012においても、そのような傾向が反映されていた。さまざまな災害の恐怖や、不正アクセスの脅威がIT産業の方向性に大きな影響を及ぼしている。

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