5. 何をやらないのかを決める
「何をやるのかを決めるのは簡単だ。何をやらないのかを決めるのが大切で、何をやらないのかを決めるのは難しい」--マイケル・デル
Dell創業者のマイケル・デル氏は当初、外科医を志してテキサス大学に入学した。両親が望んだからだ。しかし、在学中の1984年、学生寮で「PC's Limited」という会社を興しコンピュータ販売を開始した。19歳での起業だった。
「なぜDELLは直販なのか?」という質問に対して、デル氏は「幼いころから、私は不必要なステップを省略するのが大好きだった。だから、私が卸売業者の排除を基本とする会社を設立したのも、当然といえば当然だと思う」と答えている。そして「経営戦略で最も簡単なこと、最も難しいことは何か?」という問の答えが冒頭の言葉だった。
仕事をすべて一人で抱え込んでてしまう人がいる。当然、こなせない仕事は、どんどん滞っていくことになる。こんな時に必要なのは、不要な仕事を切り捨てることだ。プライオリティをつけ、頼めることや任せてもいい仕事は、同僚や部下や後輩にどんどん振り分けなければ、ほんとうに重要な仕事に専念することはできない。
6. 基礎をつくる
「自分にはツールがない。ツールを身につけないと大変なことになるぞ」--大八木成男
大八木氏が帝人に入社して最初に痛感したことだったという。大八木氏がいう「ツール」とは仕事の上での「スキル」を指している。
大八木氏が入社した時、帝人は事業の転換を図っていた。レーヨン事業から撤退し、繊維に代わる新しい方向性を模索していたのだ。大八木氏は「新しい事業なら上に人がいないから、早く第一線で活躍できる」と思い、就職先として帝人を選んだ。
大八木氏は、米国への留学を通じてMBAを取得。その後も、国内の大学で会計を勉強したり、英文速記を習うなど、仕事のツールになりそうなものを身につけていった。パソコンやワープロにもすぐに飛びついた。「多少懐は痛みましたが、新しいツールは人より少しでも早く先に学んだ方が価値だと思ったのです」と述懐する。
大八木氏は30代半ばまでに基礎を固めろともいう。
「30代半ばを過ぎて部下を持つようになると、どの企業でもさらに高いレベルの働き方を求められるようになります。それに応えるためには、自分で自分を高度化していかなければなりません。学び方もより拡張的になり、最後は発展的学びというところまで高める必要があります。ところが、基礎ができていないとそこには進めません」
誰にでも未熟な時代がある。しかしその期間に何をどう身につけるかで、後の人生は大きく変わるのだ。