オバマ大統領はまず現状について「税制の改革に手をつけるべきだ」とし、「国外へ(アウトソーシングで)雇用を持ち出したり、利益を持ち出したりする企業に税控除が認められるいっぽう、米国で納税する企業には世界でも1、2を争う高税率が課されるような現行の制度はおかしい」と問題提起(註2)。
そして「これを変える」として、次の3点を挙げている。
(1):国内にある仕事を減らし、国外のアウトソーシングに切り替えたいと思う企業は、そのための税控除を受けようとするべきではない。税控除の費用となる国税は、むしろマスターロック(Master Lock)のように、国外でやっていた仕事を米国内に持ってくることにした企業を助けるために使われるべきである。
(2):雇用や利益を国外に持ち出した企業にも、米国内での公平な税負担を課すべき。オバマ大統領はここで「今後はどの多国籍企業も、米国内で基本的な最低限の税を支払わなければならないようにすべきだ。さらに、すべての税金が米国内での雇用を維持・増加させることを選んだ企業に対する税の優遇に回されるべきである」と説明。
(3):米国の製造業には、いまよりもっと大きな税率の引き下げが認められるべき。また、ハイテク系製造業の企業には、もし米国内で製品をつくることにすれば、控除する税率をさらに倍にする。加えて、製造業の拠点閉鎖で空洞化が進んでしまったような地域に工場を誘致するなら、工場建設や製造機器の購入にかかる費用の調達を政府が助け、さらに必要とされるスキルをもった労働者の訓練にも政府が手を貸す、と述べている。
これら3つの項目を挙げたオバマ大統領はその締めくくりとして、次のように言う。
「雇用を国外に持ち出す企業に対して利を与えるのは止め、代わりに米国内で雇用を創出した企業に報いるべき時が来ている。こうした内容の税制改革法案を回してくれれば、私はすぐにでも署名する」
ここでもう一点付け加えておきたいのは、この後オバマ大統領が「熟練労働者の育成」("Training Skilled Workers" 16:30から)の部分で、生前スティーブ・ジョブズが口にしたという「コミュ二ティカレッジでも訓練できるスキルレベルのエンジニア」育成の見本となる実例を挙げ、こうした人材を「新たに200万人育成する」とコミットしている点だ。
この成功例として名前を挙げられたジャッキー・ブレイ(Jackie Bray)さんは、ノースカロライナ州シャーロットに住むシングルマザー。機械工の仕事を解雇された後、独シーメンスがガスタービン工場を同地に開設したのにあわせ、地元のコミュニティとつくった人材訓練コースで再教育を受けて、新たな、よりスキルレベルの高い職に就くことができたそうだ。
ブレイさんが年頭教書演説の晩、議会傍聴席でミシェル・オバマ大統領夫人の隣に座っていたことは、この問題に賭ける大統領自身の意気込みのほどを物語るひとつの明確なシグナルといえよう。
註2:税制に関する問題提起
"We should start with our tax code. Right now, companies get tax breaks for moving jobs and profits overseas. Meanwhile, companies that choose to stay in America get hit with one of the highest tax rates in the world. It makes no sense, and everyone knows it. So let’s change it."