マーケットにおいては、少子高齢化と人口減少、金融機関の取引先の海外進出、アジア経済の成長力の取り込みと、「国内から海外へ」の流れが顕著だという。「年初から各金融機関のIR資料等を分析しているが、ほぼすてべてがアジア経済の成長力の取り込みを狙っている」と鶴田氏。マーケットの課題は「グローバル化」と定義できるとした。
日本IBM 金融インダストリーソリューション事業担当 執行役員 鶴田規久氏
商品・サービスについては「顧客視点の金融サービス」を訴えた。個々の顧客の金融ニーズを把握し、的確なタイミングで商品やサービスを提供する必要があり、中でも各顧客ばらばらに金融商品を訴求しているグループ企業を連携させる必要があるとする。また、よりきめ細かいサービスを提供するために「ビッグデータ」の活用も提言している。
経営資源の課題は「戦略的なエリアへの投資」だ。2000年代、金融機関はコスト構造の変革に取り組んだ。その結果、地方銀行を中心に勘定系システムなどの共同化が進み、スケールメリットを活かしたコスト削減を達成した。日本IBMでは2010年代以降、より戦略的なエリアへの投資が重要になるとして、コスト“削減”ではなくコスト“最適化”を変革の課題に挙げている。
こうした3つのビッグ・アジェンダについて、日本IBMではそれぞれ次の4つのインダストリーソリューションを提供する。
- チャネル・システム・トランスフォーメーション:顧客接点の強化
先進ダイレクト・チャネル、次世代営業店、新ATMソリューション - ミドル・オフィス・トランスフォーメーション:リスク管理、顧客分析、業務最適化
統合リスク管理、情報統合基盤(インフォメーション・マネジメント・ファンデーション) - コア・システム・トランスフォーメーション:ビジネス変革、低コスト化、フレキシビリティ
決済システム/コアバンキング/保険システムの変革 - フィナンシャル・マーケット・トランスフォーメーション:商品差別化、市場分析
ビッグデータ管理、ウェルスマネジメント、ストリームコンピューティング
統合リスク管理を提供するミドル・オフィス・トランスフォーメーションでは、従来個別に管理されていたリスクを横串にして管理する。それを実現するための技術として、買収したAlgorithmicsとOpenPagesの技術を活用。「ソフトウェアをうまく活用することで、統合リスク管理が可能になる」と鶴田氏は強調している。
また、フィナンシャル・マーケット・トランスフォーメーションでは、ビッグデータ管理に注力する。即時分析の領域では、複合イベント処理(CEP)の「InfoSphere Streams」を、予測分析ではデータウェアハウス・アプライアンス「Netezza」と分析ソフトウェア「SPSS」を、大量分析では「InfoSphere BigInsights」を活用する。
これらの製品はすべて同社ソフトウェア事業に属している。日本IBM 常務執行役員 ソフトウェア事業担当のヴィヴェック・マハジャン氏は1月と2月の会見で、同社の強みは製品・サービスが「コンプリート」な点にあることを何度も強調していた。ビッグデータ分野においても1社で「多様性(Variety)」「高頻度(Velocity)」「大量(Volume)」に対応できるとしている。
金巻氏は会見で「最近のソフトウェアは、コンサルタントが考えていることがファンクション(機能)としてかなり実装されてきている」とコメント。続けて「世界中のノウハウがソフトウェアに含まれている」と述べ、ソフトウェアの高度な活用で顧客のトランスフォーメーション(変革)を支援する考えを示した。