アップル幹部のスコット・フォーストル氏に注目すべき理由 - (page 2)

三国大洋 2012年03月01日 17時37分

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「売る力」の不在を誰が補うのか

 冒頭で触れたとおり、故スティーブ・ジョブズの「売り込む力」には格別の威力があった(少なくとも私のような長年のアップル製品ユーザーには)。

 基調講演のプレゼンテーションを観ている間に、はやくも「どんな使い方をしたらよさそうか」といったことを考えている自分に気付き、はっとすることさえあった(いかに薄弱なものであろうとこの「理由付け」=エクスキューズがはっきりしないかぎりは、家人をなかなか説得しにくい、といった家庭人特有の事情もある)。知人のなかには、発表があったその日にさっそくオンラインから予約を入れる(いわゆる「ポチっ」としてしまう)者もいたりして、「実物を見ずにまあよくも……」という感想を抱いたりもするが。いずれにせよ、そうした振る舞いもすべてあの優れたプレゼンのなせる技、といっても過言ではないと思う(あれが、どれだけ周到な準備を重ねた結果だったか、という話はすでによく周知されているはずなので、ここでは触れない)。

 さて。

 ここで2011年10月初旬にあった「iPhone 4S」の発表をちょっと思い出していただきたい。その翌日に知らされたジョブズの逝去によっていっきに人気に火が付き、結局2カ月半あまりで3704万台を売り上げる空前の大ヒットとなったiPhone 4Sも、発表当日の反応はなべて「いまひとつ」といったものだった。少なくとも私がふだん目にしている各媒体の記事のなかには、「がっかりした」("disappointed")という論調のものが多かった。

 次に挙げるのは、発表直後にCNET.comに掲載された記事のなかの一部である(訳はいずれも本稿筆者によるもの)。

"The absence of iPhone 5 news put investors off yesterday. Now we'll have to see if there's any lingering effect from that bout of disappointment."
(昨日iPhone 5が発表されなかったことで、投資家はがっかりさせられた。今後はこの落胆から後に尾を引きそうな影響が生じるかどうかに注意していく必要がある)

Apple stock feels impact of iPhone 4S

"Those looking for a complete overhaul of the iPhone 4 with the iPhone 4S were likely disappointed, but the move was standard operating procedure for Apple, which has a bigger end game in mind."
(iPhone 4とはまったく違う新モデルを期待していた人たちは、おそらくiPhone 4Sにがっかりしたことだろう。しかしこれは、より大きな目標を視野に入れたアップルにとって既定路線通りの動きといえる)

The Apple iPhone 4S letdown: Why it doesn't matter

"Disappointment over the iPhone 4S, a nice iteration of a super product, points to a bigger problem of style over substance."
(優れた製品であるiPhoneを上手に焼き直したiPhone 4Sに対して落胆の声があがっているのは、「中味よりもスタイル」という、さらに大きな問題の存在を示している)

Apple's hard new reality: Elvis has left the house

 3番目の記事は、チャールズ・クーパーというCNETでも最古参の部類に属する編集者が書いたコラムからの引用で、「中味よりもスタイル」——すなわち、製品自体よりも発表のされ方が足を引っ張ったのではないか、という自身の考えを記したもの。

 記事自体の内容をかいつまんで記すと「ジョブズが発表の壇上に立っていれば、iPhone 4Sはこれまでの"one more thing"と同様に熱狂をもって迎えられたかも知れない(略)アップルにとっての新たな課題は、もうジョブズの『現実歪曲空間』("reality distortion field")に頼れないこと…(略)…ティム・クック氏もフィル・シラー氏も立派な実績をもつ堅実な経営者だが、こちらの脚にまで震えが来るほどのスリルを彼らに期待するほうが間違いというもの…(略)…世界はこの新しい現実に適応していくだろう…(略)…エルビス・プレスリーはもうステージに返ってこないという現実に」——

 ……さすがにベテラン・ジャーナリストならではの慧眼である。

 ところで。

 いまアップルのサイトをみると、同社の「集団指導体制」の核となる9人の幹部のプロフィールが並んでいる。

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