だが、大坪社長がいうように「もし、三洋電機の自動車用電池や太陽光電池がなければ、もし、電工の電材や住建、家まわり、ビルまわりの商材がなければ、テレビおよび半導体の構造改革は成し得なかった」というのも事実だ。
そして、「会社として毎年利益をあげることは当然であるが、将来に渡って企業が発展していくためのベースをどう作り込んでいくかということも重要な仕事。創業100周年となる2018年に向けて、なにをやるべきか、どういう方向で行くべきか。将来に向けての布石を打った。企業を存続させるための大きな土台は築けたと思う」という点での大坪社長が果たした成果は評価されるものだ。
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大坪社長自身は「2011年度の創業以来の巨額赤字という点だけにフォーカスすれば、私の社長としての自己採点は0点どころか、マイナスである。しかし、将来に向けての布石を打ったということで考えれば、何十点か何点かはわからないが、点数はいただけるのではないかと思っている。評価はみなさんにお任せしたい」とする。
大坪社長は社長就任時、創業者の言葉のなかから「衆知を集めた全員経営」を掲げた。パナソニックへの社名変更、三洋電機およびパナソニック電工の統合という内部の大変革、リーマンショックや東日本大震災、長期化する円高などの外的要因への対応にも、衆知を集めた全員経営の取り組みが効果をあげたことを大坪社長は強調する。
津賀次期社長も「衆知を集めた全員経営は、経営者としては基本中の基本。そして、これは、私が好きな創業者の言葉のひとつである」とする。
そして「『松下電器はモノを作る前に、人を作る会社である』。これは、これからも大切なことである」と津賀次期社長はも語る。
社長就任時に製造畑出身の大坪社長は「モノづくり立社」という言葉を打ち出したが、ソフトウェア部門出身の津賀次期社長は、「エコ&スマート」という言葉を掲げ、ソフトウェア部門出身らしい様子もみせた。
果たして、津賀新社長はどんな手腕を発揮するのか。創立100周年をまたぐ長期政権のなかで、パナソニックがどんな変貌を遂げるのかも注目されよう。