「一筋縄ではいくはずがない」とティム・クックCEO
さて。
2月下旬の「Mobile World Congress 2012」(スペイン・バルセロナ)の開催を前に、チップメーカーのクアルコムが第5世代の「Gobi」のリファレンスプラットフォーム(「MDM9615」「MDM9215」)を発表した(註4)。
このクアルコムの新チップセットは、3GのHSPA+やCDMAに加え、4G(3.9G)のLTEについてもFDD-LTEとTD-LTEの両方式に対応、さらに中国独自の3G「TD-SCDMA」のネットワークまで対応するとあって、一部のブログなどでははやくも「iPhoneの次期モデルは、これを搭載した『ワールドフォン』になる」といった話が盛り上がっていた(アップルはiPhone 4Sからすでにクアルコム製無線チップに切り替えている)。
いっぽうアップル株に関心のある投資家の間では、「これでチャイナ・モバイル(中国移動、中国最大の携帯キャリア)がiPhoneの取り扱いをはじめるのも時間の問題になった」という期待が高まっている(註5)。
この少し後に、米投資銀行のゴールドマン・サックスが主催したカンファレンスで講演したアップルのティム・クックCEOは、参加者との質疑応答のなかで「新興国の市場向けに低価格の端末を用意する必要があるのでは」という質問に対し、「必ずしもそうとはいえない」という自身の考えを示していた。
「いまプリペイド加入者が市場の主流だからといって、『いつまでもそのままの状態が続く』という考えには与しない」というクックCEOは、そうした自分の考えを裏付ける材料として、中国で最初にiPhoneを正式に取り扱ったチャイナ・ユニコムでポストペイド方式の長期契約を条件とする助成金有りの提供がうまくいっていることを挙げていた(註6)。
さらに、クックCEOはこのあと、次のように述べたという。
「われわれは、世界の国のひとつひとつについて詳しい情報を集めている。将来もっとうまくやっていくために、何に適応できるかを学ぼうとしている」(註7)
たとえ技術的な条件が整い「ワールドフォン」を実現できたとしても、あるいはいまよりリーズナブルな価格の端末を用意できたとしても、それですぐさま世界中の市場に「売れる商品」を持ち込めるということにはならない。
先に触れたギリシャやアルゼンチンの話は、そのことを示す実例といえよう。
そんな「一筋縄ではいかない」世界を相手にした経営者の認識の重みといったものを、ティム・クックCEOのこの発言の背後に感じとった次第である。
註5:中国移動はiPhoneの取り扱いを始めるのか
Qualcomm Paves the Way for an Apple-China Mobile iPhone Deal - Trefis(有料)
註6:ティム・クックCEOが語る中国でのiPhoneビジネス
At an investor conference this month, Mr.Cook added that emerging markets, which often use the prepaid model, are "critical" for the company, but that each country is different and some may evolve over time. "I don't really subscribe to the premise that a prepaid market is a prepaid market is a prepaid market," he said. Apple, he said, had persuaded China Unicom to try a contract and subsidies approach in addition to its prepaid one, and that it had performed well.
註7:ティム・クックCEO「何に適応できるか学ぼうとしている」
"You can bet that we were into details in every single country in the world trying to learn what we can to adjust, maybe to do better into the future," Mr. Cook said.
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