サイボウズは2011年11月、独自開発のクラウド基盤「cybozu.com」を発表。その上で主力製品のグループウェア「サイボウズ Office」のほか、「Kintone」「サイボウズ ガルーン」といった製品をクラウド上で展開。今後、クラウドを軸としたビジネス展開を推進していく姿勢を示している。
2月末時点では500社以上が利用。現時点で約700社にまで拡大しているという。
これらのサービスはインターネット環境と端末機器があればすぐに利用できるほか、独自にプラットフォームを開発したことで、SSL通信、IPアドレス制限やBASIC認証、個人別クライアント証明書によるPKI認証といったセキュリティ対策も実現しており、モバイル端末を使ったフィールドワークや在宅勤務などの多様なワークシーンでも安心して利用できる。
クラウドであることから、サーバやストレージの販売、ネットワーク構築といったことが不要であるため、ITの専門知識を満たない企業も販売できる環境が確立されている点も見逃せない。
そして、それはサイボウズにとって、従来はアプローチできなかった新たなユーザー層にサイボウズのサービスを利用してもらえるきっかけにもつながる。
サイボウズの野水フェローは「パッケージ版は情報システム部門が中心になって導入しているのに対して、クラウド版は経営者や総務部などのユーザーが中心となり、規模は小さい。パッケージ版では、平均導入規模は約70ユーザーだが、クラウド版では5〜14ユーザーの規模がもっとも多く、全体の60%以上を占めている」という。
そして「クラウド版の売れ行きは、サイボウズが誕生したころの様子に似ている」とも語る。
同社によると、クラウド版を購入したユーザーの業種を分析すると、同業者ともいえる「ソフト・システム業」が最も多く、続いて「士業」が多いという。
サイボウズ創業直後の顧客層もほぼ同様で、売り上げの約半分をソフト・システム業が占め、士業と製造業を含めると全体の6割以上を占めていたという。
青野社長も創業時を振り返りながら、次のように語る。
「もともとサイボウズはグループウェアをインターネットでのみ販売し、インターネットでのみサポートすることでスタートした。クラウドビジネスは、サイボウズの創業時のビジネスモデルに回帰するともいえる」
cybozu.comフレンドは、クラウドに適したネットを通じた販売モデルを後押しすることになる。
そしてサイボウズの野水フェローは、「クラウド版は情報システムの専門家ではない人が導入している。また、クラウドユーザーは、技術面よりも運用面での相談が多いこと、IT専門誌ではないところから認知が始まっている。一方で、サイボウズのユーザーの65%が、他人にサイボウズを勧めているという調査結果もある」
こうした動きが、フレンド制度のきっかけにもなっている。
従来のパートナー制度では、サイボウズの教育を受けて専門の技術者を育成。販売数量をコミットするというように、技術に裏打ちされた信頼性が重視される。それに対してフレンド制度は、サイボウズの製品に対して共感してもらえる「友達」を増やし、情報交換の延長線上にビジネスが発生するという考え方だ。だからこそ名称に「フレンド」とつけたともいえる。
「これまではサイボウズ製品を勧めていただいた方々に対してお礼ができていなかった。これはキャッシュバックという形でお礼をするための仕組みともいえる。販売プログラムとアフィリエイトプログラムの中間になる」とする。
cybozu.comフレンドは、まずは法人を対象に実施するが、将来的には個人の資格取得も検討していくという。
一方で青野社長は、cybozu.comのプラットフォームを活用して、第三者がアプリケーションを展開できる仕組みも検討していることを明かす。
これもクラウドのプラットフォームを独自に開発したことによって実現できる仕掛けだ。
「もし、サイボウズよりも優れたグループウェアを開発しているISVがあれば、それをcybozu.com上で展開してもらい、ユーザーの選択肢を広げることにもつながるだろう」と、冗談とも本気とも取れる事例を出しながら、その方向性を示す。
「参加する企業は、ISVや情報システム部門など様々な可能性が考えられる。ISVからの参加が多ければ、新たなパートナー制度として展開していくことも考えたい」(青野社長)
サイボウズは、クラウド事業の拡大を重点課題に掲げている。そのなかで、販路の拡大の切り札となるのがcybozu.comフレンドであり、cybozu.com上でのアプリケーションパートナーの展開といえる。
これらのパートナー戦略は、サイボウズのクラウドビジネスを捉える上で見逃すことができないものになるといえよう。