同社は仙台に本社を置くが、韓国の企業とセキュリティ製品を共同開発し、主に大都市圏で販売している。「セキュリティ製品の販売は東京が7割で、残りの3割が大阪と名古屋。導入企業は5000社になった」と佐々木氏。このモデルを「グローバルで開発して都市で売る」と説明する。
一方、ローカルで開発し、ローカルのニーズにも対応している。東北大学大学院 工学研究科 情報知能システム(IIS)研究センターのアドバイスを受け、地域医療向けの高速画像処理共有システム「Med.i.Compressor」を開発。鹿児島の離島10カ所の医療機関が導入した。
レントゲンなどの医療用の画像は1.5ギガバイトにも及ぶことがある。また、離島では光回線が施設されていないことも多い。ADSL通信では1.5ギガバイトの画像送信に3時間かかることもあるという。そのため、診断画像の高速送信を実現するシステムが求められていた。
Medi.i.Compressorによって、これまで3時間かかっていた送信が15分程度まで短縮されたという。
「地域コミュニティだけではどうにもならない」と語った佐々木氏は、続けて「東北と他の地域とをつなげる役になりたい」とも述べていた。
「今はグローバルスタンダードという名のアメリカ流のビジネスがおしつけられている。しかし、こういう(つなげる役という)活動を通して、日本特有のニーズが見えてくる」
グローバルに開発してローカルに売る、ローカルに開発して別のローカルに売る——「トライポッドワークスは二面性を持っている」と佐々木氏はいう。仙台と東京、鹿児島、韓国など、外と連携することで成果を上げている。
ITの“I”で支援する
「地方都市から情報を発信するモデルになりたい」という佐々木氏の考えは、トライポッドワークス設立当初からのものであり、また震災復興にあたっての重要なテーマであった。
「震災直後は情報の流通が滞っていた。そして、今も滞っている。今後はIT(情報技術)の“I”、情報で支援したい」
震災発生後、1年はパソコンや通信機器など500台を被災地に提供し、物資を中心とした支援を続けてきた。2年目に入った今、情報の流通を含めたソフト面での支援に重きを置いて活動したいという。