サイボウズはクラウドビジネスの本格化にあわせて、クラウド基盤の開発、運用を自前で行うことにこだわった。
「他社のプラットフォームを利用すれば、初期投資は少なくて済むが、自らの責任で安定した運用が担保できないこと、原価が乗ることになり、最適な料金設定を実現する上でも課題となることが想定された。それを回避するためにも自前でクラウド基盤を用意した」と青野社長は語る。
cybozu.comでは、cybozu.comのドメインの前にユーザーごとの専用サブドメインを用意。専用領域を設定して、ユーザー情報やセキュリティを一元的に管理している。また、社外から利用する端末にはクライアント証明書を発行することも可能であるほか、IP制限およびPKI認証による認証も可能だ。
「世の中にはプライベートクラウドとパブリッククラウドの2種類があるとされているが、cybozu.comが提供するのはその中間。プロテクテッドクラウドという第三の選択肢になる」とする。
プロテクテッドクラウドとは、プライベートクラウドが持つ強固なセキュリティ環境と、パブリッククラウドが持つ手軽で低コストな環境を両立するクラウドコンピューティング環境だと位置づける。
同社では、cybozu.comが人気を博している要因のひとつが、こうしたプロテクテッドクラウドの実現によってセキュリティとコスト、安定性をバランスよく維持していることだと自己分析している。
サイボウズの2012年度業績見通しは、1月31日締めを12月31日締めへと変更することで1カ月少ない分、前年比3.9%減の40億6000万円の売上高を見込む。「12カ月分に組み替えると、前年比では若干プラスになる」(青野社長)とする。だが、営業利益は52.4%減の3億1000万円、経常利益は52.0%減の3億2000万円、当期純利益は54.8%減の1億8000万円と、大幅な落ち込みを想定している。
「大幅な減益は、クラウドビジネスの立ち上げに伴う開発費や広告宣伝費の増大によるもの」と青野社長は説明。「いまクラウドの波に乗り遅れると、あとは死ぬだけ。危機感を持って、今年度の事業に取り組んでいく」とする。
「クラウドへのシフトは、投資が先行することから最初は苦しい。しかし、2013年度以降、毎月定期的に収益が計上できるようになり、着実に業績は回復していくと予測している」。
クラウドへのシフトをいかにうまく進捗させることができるか。サイボウズにとっては、2012年度が生死をかけた重要な1年となる。