サーバなどのIT機器は、「性能の向上」と「グリーン化(消費電力・エネルギー・発熱量の低減)」という二つの相反する要求を満たすよう開発が進められました。CPUの性能を上げるためにはクロック周波数を高くする必要があり、それに比例して消費電力が増えます。また、接続されるメモリも大きくなるため、その分の消費電力も増加します。
IT機器で消費される電力は全て熱になるため、例えば100Wの電力を消費するサーバからは100Wの熱が出てきます。サーバでは更に余分な電力を使って冷却ファンを回し、空気を取り入れてこの発熱を外部に出します。こうして、サーバの排気口からは熱い空気が出て来ます。
データセンター全体では、熱い空気によって集められてきた熱を、空調機などで外部に放出する必要があり、この空気の循環や空調機の運転の為の設備にもエネルギーが消費されます。
一方、IT機器の省エネルギーに対する強い要求に応えるため、消費電力を抑える技術である低電圧化や新しいアーキテクチャなどが開発されるとともに、CPUの使用状態やサーバ内の温度に合わせて消費電力や冷却ファンのスピードを細かく制御する方法も開発されました。(図1、図2)
サーバ単体でこの流れをまとめると以下となります:
- 性能の向上による消費電力(=発熱量)の増大と小型化により発熱密度が上昇
- 一方、低電圧化などの省エネ技術が進捗
- 全体として性能向上のスピードが速くなり、その結果として発熱量は増大
これを補うために、CPUの運転条件に合わせて消費電力をコントロールする技術の開発も進んできました。従来は、常に最高性能を発揮するように、CPU使用率が100%の時も低いとき(アイドル時)も消費電力は変わりませんでしたが、近年ではCPUの使用率が低いときや吸気温度が低いときにはCPUやメモリの消費電力を下げ、更にファンスピードも遅くして、省エネにつながる技術が実用化されています。また、パワーキャッピングとよばれる、予め設定した消費電力の値を超えないようにCPUのクロックスピードを制御する手法も使われています。
これらによって、サーバの消費電力(=発熱量)と冷却風量は、運転状態と使用条件により、ダイナミックに変動するようになりました。また、ハードディスクを使ったストレージ装置では、メモリが使用されていない時には消費電力を下げる制御が行われており、こちらもダイナミックに変動することになります。
次回は、発熱量を変動させるもう一つの要素である「仮想化」の影響について解説します。
参考資料:
シュナイダーエレクトリック株式会社 ホワイトペーパー
#138 サーバ吸気温度とエネルギー消費の関係
インテル「インテルミュージアム マイクロプロセッサーを支える最新テクノロジーの世界」
日本HP「HP Proliant サーバー Generation 6 省電力リポート」
日本HP「HP Proliant サーバーの消費電力上限および動的消費電力上限」
著者紹介:
シュナイダーエレクトリック株式会社 取締役 佐志田伸夫
技術士(電気電子部門)