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「ナノ秒」争う高頻度取引の世界 アルゴリズムとインフラが勝負の分かれ目 - (page 2)

三国大洋

2012-03-28 12:34

「ナノ秒」争う高頻度取引の世界

 昨年11月にNHK BSで『フラッシュ・クラッシュ 〜 株取引 超高速化の落とし穴』という番組が放映されていた。「番組内容」には次のような説明がある。


2010年5月にウォール街で突然起きた株価急落“フラッシュ・クラッシュ”。その原因について専門家に取材し、電子化が進んだ現代の金融システムの弱点を検証する。
[番組内容]
2010年5月6日、アメリカ株式市場で起きた突然の株価急落「フラッシュ・クラッシュ」。市場分析の専門家や経済研究家、SEC(証券取引委員会)の調査担当者などへの取材をもとに、原因を検証。効率化を図るために株取引の電子化を積極的に進めてきた結果、コンピューターに管理されたシステム内に、コントロール不可能な“ブラックボックス”を抱えてしまっているという弱点を指摘する。

 この説明からも察せられる通り、オランダのテレビプロダクションがつくったというこの番組、中味は「何か恐ろしい暴走が進んでいる」といった印象を観る者に与えるように編集・構成されていると思える。

 ただ、そうした作り手の主観的な「見方」を差し引いても、そのなかには興味深い事実や関係者の意見が多数出てきている。

ニュージャージー州の「データセンター銀座」

 前述のBatsの話のなかにも「1秒間に処理する取引件数が2万9000件」とある通り、この分野では「ミリ秒」(100万分の1秒)や「ナノ秒」(10億分の1秒)が大金を稼ぐか(あるいは失うか)の分かれ目となっている。そこで問題になるのが、ネットワークのレイテンシ(遅延)だ。

 番組内のある場面では、ウォールストリート(ニューヨーク市内)から半径50〜55kmの円形が描かれ、「これ以上外側だと、たとえ大容量の光ケーブルをつかっても大きなハンディキャップとなるレイテンシが発生する」とした上で、そのほか電源確保の問題や付近の交通量、頭上を通過する航空機(経路)などさまざまな要因を考慮した結果、ニュージャージー州のあるエリアに巨大なデータセンターが集中することになったと解説。

 水先案内人をつとめた不動産仲介業者はもともと大手金融機関で働いていた人物で、その後データセンターの立地探しを専門とする商売に転身したという。また、この人物の案内で回った現地の映像には、NASDAQ自体のデータセンターに隣接する某大手金融企業(どこの会社のものか、外部の人間にはわからない)のデータセンターなどがふくまれていたが、厳重な警備で守られたこの要塞のような施設は、NASDAQのそれの倍近い大きさがある(航空写真で比較していた)。

かつての交易ハブが金融ハブに

 Batsが本社を置くミズーリ州カンザスシティ周辺の様子も取材(ただし、別の会社についての話題で)。地図をみるとはっきりするが、カンザスシティは米国のほぼ中央(東西にも南北にも)に位置し、昔から交易のハブとして機能し、鉄道網なども発達していた。いまはあまり使われなくなったこの鉄道沿いの敷地を利用する形で、高速の通信ネットワークが敷設されており、高速通信に適したロケーションとなっている。

フラッシュ・クラッシュの影響

 2010年5月6日午後に起きた「フラッシュ・クラッシュ」の際には、プロクター&ギャンブル(P&G)、アクセンチュア、アップル、GEなどの銘柄がそろって急落。なかには、それまで42ドルをつけていた株価が2〜3セントまで下がった銘柄もあったという。

76億以上のデータポイント

 この日だけでデータポイント(取引売買記録)の数は76億以上もあった(このデータを独自に分析したシカゴのアナリストの話)。

 各取引所のシステム側の処理が追いつかず、同じ銘柄の株価表示に5秒程度のラグタイムが生じた場合もあった。値動きが激しいこの日のような場合には、このラグタイムをついた裁定取引(Aの市場で買い注文を入れると同時に、Bの市場で売り注文を出す)で大きく設けるチャンスが発生する。

サーキット・ブレーカー

 SEC(米証券取引委員会)ではこうした異常事態の発生に備えて「サーキット・ブレーカー」というルールを設けている。具体的には、株価が急に10%以上上昇もしくは下落するような場面が5分間続くと、その銘柄の売買を停止させる、というもの(23日のアップル株式についても「このサーキット・ブレーカーが発動された」とある)。

 だが、特定のアルゴリズムに基づいて売買を繰り返すコンピューターにとっては、この5分間という時間の長さは「永遠に等しい」と、ある金融機関のセールス担当者は指摘している。

 SECでは、この日の5分間の出来事を検証するのに約5カ月を費やすことになった。

 SECの調査結果では、カンザスシティにあるワデル・リードというトレーダーが短時間に出した大量の注文が引きがねとなり、この瞬間的な暴落(フラッシュ・クラッシュ)が生じたとされた。ところが、独自のデータ分析を行ったシカゴのアナリスト(エリック・ハンセイダーという人物)はこの調査結果に異議を唱え、「1秒単位でしか売買注文の動きを追っていないSECでは、真相はわからない」と主張。(このあたりが番組の山場か、という印象)

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