なかでも注目されるのはBYODへの取り組みだ。先にも触れたように、インテルでは社内で使用されているハンドヘルド機器の58%が、個人所有のデバイスだという。
「社員が自ら所有している端末を利用することで、社員の生産性は1日あたり47分向上。インテル全体では年間約200万時間の生産性向上が図れた」という。
携帯端末向けの各種ビジネスアプリケーションを提供しており、インスタントメッセージング、会議室予約、音声会議スピードダイヤルなど、7種類のアプリケーションがすでに実用化されている。これらのほかにも、28種類のアプリケーションを現在開発中だという。さらにソーシャルメディアの活用にも取り組んでおり、ソーシャルメディアプラットフォームに企業向けに特化したツールを組み込んでいるほか、特定のビジネスグループ向けにはカスタマイズしたソーシャルメディアソリューションを導入するといったことを行い、携帯端末の利用促進を図っている。
BYODの適用対象となる端末では、主要なすべてのOSに対応。今後はMacや個人所有のPCにも適用対象を広げるという。
しかし、課題となるのは、こうしたITのコンシューマ化に対するセキュリティをどう確保するかという点になる。
富澤部長は、「ここ数年で脅威の質が大きく変化してきている。かつては愉快犯だったものが、企業に直接的な被害をもたらすようなものが増えている。社員がSNSで勝手につぶやくという環境を実現する一方で、本気になってかかってくる相手に対してガチガチのシステムを作るわけにはいかず、むしろ完全に守りきることはできないという前提でいるべきだろう。攻撃を受けたときに、いかに全体に対する影響を防ぐかという形に考え方を変えた」と語る。
インテルでは、独自の信頼度計算を行うツールの開発とテストを実施。PCとスマートフォンで閲覧できる範囲を制限したり、同じスマートフォンでも社内と社外といった接続環境によって、制限の範囲を柔軟に変更したりといったことを行っているという。また、複数ソースのマルウェア情報を統合するビジネス・インテリジェンス・ソリューションを導入。さらに、約2万人の社員を対象に、企業内権限管理(ERM)ソフトウェアを導入することで、柔軟性を高めているという。
「Protect to Enable(可能にするためのセキュリティ保護)を基本方針に掲げ、社員の生産性を損なうことなくビジネスの機敏性を向上させ、リスクを軽減するという考えを採用している」と、インテルのBYODに対する姿勢を示す。
BYODは、日本の企業にとっても避けては通れない課題となるだろう。インテルの事例は、そうした点でも先行指標として注目されるものといえる。