未来のコンピューティングの正しい姿
講演の最後には、故スティーブ・ジョブズについても言及した。
「我々は時々、2人で長い散歩をした。その時、スティーブが話したアイデアはシンプルであった。それは、マイクロソフト、インテル、HPの3社が一緒になってPCの世界を築き上げることは、複雑であり、意思決定も難しい。しかし、もし1社でソフトウェアとハードウェアを開発し、オンラインサービスを展開できればどうだろうか。それを成し得たのがアップルである。そしてアップルは、インテルと同一である必要はない。それは、ポルシェのウインドシールドを、レクサスに無理やり取り付けるようなものだ。優れたものでもフィットはしない。アップルの世界では、アップルのソフトウェアやサービスがシームレスにつながり、フィット感があることが大切である。すべてのピースがうまくフィットすることがビッグアイデアだといえる。アップルはそれをマイクロソフトやインテル、HPの研究予算よりも少ない投資で実現した。これが未来のコンピューティングの正しい姿である。スティーブがアップルに戻ったときの時価総額は50億ドル程度だったが、それがいまや100倍の時価総額になっていることが正しい姿であることの証だ。オラクルは、それをバックエンドで支え、iPhoneやiPad、各種のタブレット端末などを結びつけ、モバイルインターネットの世界を構築する。これがオラクルの戦略となる」などとした。
その後、エリソン氏は京都の会場の聴講者からの質問を受け付けた。
「競合企業がオラクルをキャッチアップする可能性はあるのか」という質問に対しては、「オラクルはEngineered Systemsに関して、7年の歳月をかけて開発を行ってきた。IBMもEngineered Systemsに向けた製品を投入する可能性があるが、2年で追いつくのは無理だろう。ただ、IBMが追いかけようとしているだけでも面白いことであり、我々もIBMを追うよりも、追いかけられるほうがいい」と回答した。
また、「かつてIBMによるベンダーロックインによって、高いコストを負担せざるを得なくなるなど、苦い思い出がある。オラクルも同じようにならないのか」との質問については、「オラクルにおいては、ロックインはないと考えている」と回答。
「Oracle Databaseを最高のパフォーマンスで利用したいのであれば、Exadataがいいのは確かである。しかし、3カ月後に富士通からよりコストパフォーマンスの高いものが出れば、それを選んでいただければいい。オラクルは、選択肢を必ず存続させる。恒久的にExadataを使わなくてはならないというものではなく、性能、コストパフォーマンス、信頼性において、別の選択肢があれば、それを選んでいただきたい。我々が戦うのは、性能とコストである。IBMの例をみてもわかるように、法外な費用を請求されれば顧客は逃げていく。この世界には、競争や選択肢がなければならないのだ」(エリソン氏)
さらに、オープン化への取り組みについても言及。「Javaにはスタンダードなコミュニティがあるが、唯一、Javaに対してGoogleだけが反対している。これは、2週間後には法廷で争うことになっている」などとした。