日本オラクルが4月4日から3日間実施しているユーザーカンファレンス「Oracle OpenWorld Tokyo 2012」には、米Oracleから各製品分野の責任者が参加している。3日目の基調講演を務めるのが、Oracle Fusion Applicationsの特にCRM分野を担当するシニアバイスプレジデント、Anthony Lye(アンソニー・ライ)氏だ。最近の買収により、ソーシャルネットワークサービス(SNS)とCRM系アプリケーションを組み合わせるなど、新たな取り組みを進めるOracleの戦略について聞いた。
―― Fusion Applicationsで提供している「CRM」の機能の開発経緯を教えてください。またCRMは従来とは変わりつつあると考えますか。ライ氏 Fusion Applicationsのリリースが(当初予定の2008年から)遅れたのは確かですが、今ここにしっかりした製品があります。新製品はビジネス・インテリジェンス(BI)、Web 2.0、クラウドコンピューティングなどさまざまな要素が盛り込まれた次世代プラットフォームになりました。
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われわれはこの14カ月で重要な5社を買収しました。(チャットサポートなどコンタクトセンター向けソフトウェアの)RightNow、(eコマース向けソフトウェアの)ATG、(SNSの機能を取り込んだCMSを提供する)FatWire、(企業内情報検索エンジンの)ENDECA、(顧客サポート製品の)InQuiraです。
こうした機能を取り込むことで、CRMは以前とは異なるものになってきています。企業の内側のものとして発想していたCRMが、「顧客の経験」を取り込むことで外側へと広がってきているのです。内側から外側に踏み出すということは、複数チャネルにまたがった仕組みがつくれるということです。例えば、オンラインで購入したものを店舗で受け取ったり、OracleとAccentureが共同で顧客との関係を管理したりといった仕組みをつくれるのです。
このときCRMの定義は変わります。われわれは「Customer Experience Management」(CX)と呼ぶことにしています。企業のCEOはCRMに興味を持たなくてもCXには持つでしょう。米国では、企業の公式ホームページよりも、Facebook上の企業ページの方がアクセスを集めていることも珍しくありません。Facebookを前提にCRMを実施する場合、自ずとFacebookでの顧客の声などを取り込むことになります。
外側の世界であるSNSなどの普及は、われわれにとって大きなビジネス機会であり、今ほど顧客経験をビジネス化することが楽しい時期はないと思っています。
今後、ユーザー企業が顧客戦略を立てるとき、内側だけを見る従来型CRMだけで判断すると負けてしまいます。CXの視点が必要なのです。