ところで、そんなクックCEOにとって、24日には2度目となる決算発表がある。
前回(1月)の発表が「ジョブズ特需」「iPhone 4S発売景気」で下駄を履いていたとみる私のような者には、今度の1〜3月期決算発表が「クック体制の真価をみられる」初の決算ともいえるものだ。
長らく控えめなガイダンスを出し続けてきたとされるアップルにしてはめずらしく強気の予測を出しているということもあり、実際にはこれをどの程度上回ってくるかに注目している。
アップルの株価はこのところいわゆる「修正局面」なのか、わりと大幅に上下している。「1株1000ドル」「2015年には1650ドル」といったアナリストの予想が出たかと思うと、つぎには「5日連続で株価10%も下落」「2日で30ドル(約5%)上昇」といった案配。
- Gene Munster Says Apple Is Going to $1,000 - Businessweek
- Apple Shares at $1,650 Within 3 Years, Jackson Says - Bloomberg TV
- Apple Shares Lose Shine - WSJ
むろんこれらは短期的なもので、2021年までの長い期間を見据える必要があるクックCEO自身の思惑とは違うところでの出来事だろう。ちなみに、この対投資家関連でひとつ面白いと思ったのが、Business Insiderに掲載されたチャート(円グラフ)だ。
既存の株主構成を示したこの円グラフによると、年金基金(Pension)は全体の3%しかないという。株主配当実施の発表の時に言われていたとおり、こうしたお金が流れ込んできたら、どんなことになるのか……今年後半の注目点のひとつである。
最後に。
そういうクックCEOが、5月下旬に開かれるAllThingsD主催の「D10」カンファレンスに登場することになった。しかも、メインゲスト(オープニングセッションのスピーカー)として壇上に上がるという(註4)。
これまで自社の製品発表イベントくらいしか大勢の人前で話をしたことのないクック氏が、これだけ人目につく場で、しかもQ&A形式で話をするというのは、おそらくこれが初めてかと思う(註5)。
どういう経緯があって——つまり、主催側との間でどういう交渉があって、公の場で話す気になったのかは無論知る由もない。ただ、普通に推測すれば、オファーを受けて「はい、そうですか」と簡単に出てくるような相手ではない。また聞き手が、アップルと非常に近しく、一部で「アップル(製品)の応援団」と評する声もあるウォルト・モスバーグ氏という点を考え合わせると、「予定調和」的に無難な話に終始する可能性も十分にあるだろう(註6)。
それでも、ごく最近までほぼ「謎の存在」に近かったクック氏がどんな人物かを知る、絶好の機会になるのではと大いに期待している。
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註4:クックCEOがD10のメインゲストに
過去には「スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツの共演」(2007年のD5)や、ジョブズの単独での登場(2010年のD8)もあったAllThingsD主催のDカンファレンスだが、今年のゲストは例年にも増して「気合いを入れて集めた豪華な顔ぶれ」との感がある。
ティム・クックCEOに加え、ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏、オラクルのラリー・エリソンCEO、米連邦公正取引委員会(FTC)のジョン・レイボウィッツ委員長といった大物から、いまのシリコンバレーを動かす面々——リンクトインのリード・ホフマン会長とジェフ・ワイナーCEO、ジンガのマーク・ピンカスCEO、「なにかとお騒がせな」という形容句がついてまわるショーン・パーカー氏(元ナップスター、元フェイスブック:スポティファイのダニエル・イクCEOとともに)、さらにはピクサー共同創業者のエド・キャットマル氏、元マイクロソフト・リサーチのネイサン・ミアボルド氏、そしてモルガン・スタンレーから一昨年暮れにクライナー・パーキンスに移ったメアリー・ミーカー氏などの名前も登壇者リストのなかに並んでいる。
なお、ミーカー氏といえば毎年秋にWeb 2.0 Summitで披露していた「Internet Trends」のプレゼンで有名だが、Web 2.0 Summitの中止が発表された今年はきっとD10で発表をしてくれるのでは、とこちらも期待している。
註5:公の場でQ&Aに挑むクックCEO
そのほかには、四半期ごとの決算発表や投資家向けのカンファレンス、それに母校オーバーン大学での卒業式など、ほとんどがクローズドな場だったと思う。
2010年5月オーバーン大学卒業式で
註6:ザッカーバーグCEO、モスバーグ氏の盟友スウィッシャー氏から質問攻め
逆に、D8ではフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが、ユーザープライバシーに絡む質問攻めを受け、びっしょりと冷や汗を流す場面もあった。