日本オラクルが開催した「Oracle OpenWorld Tokyo 2012」で、中国の総合家電メーカーのハイアール(海爾)が「グローバル市場で躍進する中国家電メーカーCIOが語るIT戦略とミドルウェア活用」をテーマに、同社のグローバル展開を支えるIT戦略について語った。
講演者はハイアール IT&基盤技術部 部長の高麗氏だ。
ピラミッド構造を逆転させたハイアール
世界165カ国で事業を展開するハイアールは、冷蔵庫と洗濯機で世界ナンバーワンのシェアを獲得している。2011年には全世界での連結売上高が233億ドルに、営業利益が11億6000万ドルに達した。
ハイアール IT&基盤技術部 部長の高麗氏
高氏は「いまや当社は907億元のブランド価値を保有するに至っている。食器洗浄機や冷蔵庫など8つの項目で世界一だ。SNSを用いて顧客との距離を縮めるとともに、顧客を分析し、都市だけでなく村や小さなコミュニティにも入りこんで多様な声を集約し、最適な商品を開発している」と話す。
ハイアールでは、イノベーションは人によって築かれると考えている。「管理モデルを転換し、ビジネスモデルをインターネットの時代に適合するよう努力を重ねている。管理モデルの改革で、当社と顧客いずれにも利益がもたらされる関係が築かれている」
組織の改革も重要な点だ。高氏は「当社の組織はもともとピラミッド型だった。頂点に経営層がおり、エンドユーザーに接するのはピラミッドの底辺部にいるスタッフであり、中間にはさまざまな部門の管理者がいた」と述べる。
そして、この階層構造こそ課題となっていた。
「顧客の声は上層部に伝えられるのだが、時間がかかり、意思決定が遅れ、市場の激しい変動に素早く対応することが困難になる。そこで、このピラミッドを逆転させた。経営トップが下層になり、スタッフと顧客が最上層というような構造に変えた。企業と顧客の距離をゼロにしよう」という試みだった。
さらに顧客満足度を向上させるため、8万人のスタッフを2000の独立した経営チームとした。その結果、すべてのスタッフが顧客と市場に対してダイレクトに接することが可能になったという。また、経営改革のため、従来型のバランスシートの発想も改めている。「我々はこれを、戦略、経営、予算、価値共有という4つの象限で表現している。皆が価値を共有し、従業員が顧客のために価値を創造して業績を上げ、資源の無駄を省くこと」を目指している。(関連記事:ハイアールCEO、ドラッカーをもとに組織改革を推進--独自の経営モデル目指す)