税金を払わないIT企業 - (page 2)

三国大洋 2012年04月26日 13時20分

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 こうした節税対策は、なにも昨日今日に始まった話という訳ではない。けれども、こういう話でつい大騒ぎしてしまいがちなのはメディアの「習性」らしい。

 最近でも英国のデイリー・メール(Daily Mail)という大衆紙が「アマゾンが税務当局から調査 - この2年間に英国では1ペニーも税金を納めず」(註7)、「アマゾンやグーグルの税金逃れの浅ましい実態」(註8)、「アップルは英国で60億ポンドも売上げながら、納めた税金はたったの1000万ポンド」などと書き立てていた(註9)。

 むろん、その一方には「こうした合法的な対策を打って利益を少しでも増やすのが、企業に課せられた株主の義務」という見解もあるので、単純に白黒つけられる問題でないことはいうまでもない(註10)。むしろ、多国籍企業と各国家との「力のぶつかり合い」とみるほうがニュースとして楽しめるという気もしなくはない。

 さて。この2010年10月のBloombergによる報道には、ある種のオチがつく。

 いまになって気付いたのだが、この前日にWall Street Journal(WSJ)が、シスコのジョン・チェンバースCEOらのRepatriation Tax Holidayの再度実施を訴えた寄稿記事を掲載していた。つまり、「海外で遊ばせている膨大な資金を、国内に有利な条件で持ち込めるようにしてくれれば、これほど米国経済の役に立てる」というチェンバース氏ら大企業経営者の呼びかけに対し、「米国の大手企業があれほどたっぷりと国外に利益を溜め込んでいる裏側には、こういう仕掛けがある」とBloomberg(に詳細な情報を提供できる立ち場の協力者)が反論をぶつけた、ということだ。

新たな議論の口火を切ったシスコのチェンバースCEO

 2010年10月20日、「The Overseas Profits Elephant in the Room」というタイトルの意見記事(Op-Ed)がWSJに掲載された。

 シスコシステムズのジョン・チェンバースCEOと、オラクルのサフラ・カッツCFOの連名で出されたこの記事の趣旨は、「税制さえ正しければ、1兆ドルものお金が海外から持ち込まれるのを待っている」("There's a trillion dollars waiting to be repatriated if tax policy is right.")という副題が示す通りだ。

 550ワードあまりの短い文章のなかに、Repatriation Tax Holidayの実施(法制化)に向けて理解を求めるWIN America支持グループ各社の考えが簡潔にまとめられている。

この記事で目についた点を書き出しておく。

  • オバマ大統領の政策は十分な雇用の拡大に結びついていない。
  • 米国の多国籍企業が海外に置いたまま国内に持ち込めずにいる1兆ドル("One trillion dollars")の資金を、国内での雇用創出や米企業の競争力向上に役立てない手はない。
  • ところが、国内に持ち込もうとすると最高35%もの連邦法人税(と、そのほかに地方税)が課せられるという大きなペナルティがある。ほかの先進諸国(いわゆる「テリトリアル課税方式」を導入済の国)などでは、企業が国外市場で稼ぎ、現地で税金を納めた利益は0〜2%程度で持ち込める。それに比べると米国に本社をおく企業は不利な立ち場にある。
  • そこで、たとえば5%程度の課税率で、この1兆ドルを米国内に持ち込めるようにしてはどうか。そうすれば、企業側では雇用増加や研究開発、設備投資などにこの大金を使えるようになるし、また連邦政府も500億ドルの臨時増収を見込めるようになる。
  • 政府はこの税収を、企業に対して新規雇用を働きかけるインセンティブとして使える。その結果、200万人以上の雇用創出が見込める。

 きわめて魅力的な内容にも思えるこの提案だが、簡単に「ハイ、そうですか」と行かない理由があることについては、以前に少し記した通り。反対派の主張については、次回にもう少し具体的に説明することとしたい。

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註7:「アマゾンが税務当局から調査 2年間で英国に1ペニーも税金納めず」

Amazon faces probes after 'not paying a penny in company tax in Britain for two years' - DailyMail

「アマゾンが米SECに提出した書類のなかに、英、仏、独、日本、ルクセンブルクなどを含む各国で、税務当局から調査を受けていることを認めた」。「英国ではここ2年、1ペニーも法人税を払っていない」などとある。

"Buried in a submission to the U.S. Securities and Exchange Commission, a federal regulatory agency, it admits to being ‘under examination, or may be subject to examination' in a long list of countries including Britain, France, Germany, Japan and Luxembourg.

Amazon.co.uk's latest accounts reveal that it did not pay a single penny of British corporation tax in either 2010 or 2011."


註8:「アマゾンやグーグルの税金逃れの浅ましい実態」

Amazon, Google, and the sordid reality of tax avoidance - DailyMail

グーグルの場合には、同社と英保守党関係者との「関係の近さ」も怪しまれる原因となっているようだ。

David Cameron's former adviser Steve Hilton is married to Rachel Whetstone, a former head of communications at Google, who was also godmother to the Prime Minister's late son Ivan.

And only a few days ago, Chancellor George Osborne was hobnobbing with Google bigwigs at the opening of the 'Google Campus' in east London


註9:「アップルは英国で60億ポンドも売上ながら、収めた税金はたったの1000万ポンド」

Apple 'made £6bn' in UK... but paid only £10m in tax - DailyMail

このアップルの話からは、同社がグーグルとほぼ同様のやり方——アイルランドの別法人を介してバージン諸島(タックスヘブン)の法人に利益を環流させていることが伺える。


註10:単純に白黒つけられる問題ではない

The high corporate tax rate in the U.S. motivates companies to move activities and related income to lower-tax countries, said Irving H. Plotkin, a senior managing director at PricewaterhouseCoopers LLP's national tax practice in Boston. He delivered a presentation in Washington, D.C. this year titled “Transfer Pricing is Not a Four Letter Word.”

"A company's obligation to its shareholders is to try to minimize its taxes and all costs, but to do so legally," Plotkin said in an interview.

Google 2.4% Rate Shows How $60 Billion Lost to Tax Loopholes - Bloomberg

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