アップルの過剰な節税を嘆く地元民 - (page 2)

三国大洋

2012-05-02 18:37

誰のための税制優遇措置か

 以前「税金を払わないIT企業」で触れたが、シスコのジョン・チェンバースCEOとオラクルのサフラ・カッツCFOはWSJに意見記事(Op-Ed)を寄稿し、海外で溜まっている米国企業の資金について「1兆ドル」という金額を挙げた。

 この金額については、米ムーディーズがもう少し新しく、そして具体的なレポートを出している。

 3月14日付のレポート(PDF)によると、米国企業の手持ち現金(流動性資金)は昨年末時点で合計1兆2400億ドルとなり、そのうちの半分強(57%)が海外に留め置かれたままだという。また、ちょっと興味深いのは、この現金の2割強(22%)がわずか5社——アップル、マイクロソフト、シスコ、グーグル、そしてファイザーの手にあるという(参考「Live Blog: Apple Announces Cash Plans - Digits(WSJ)」)。

 この5社分の合計金額は、2010年の2070億ドルから2011年には2760億ドル(2757.51億ドル)に増え、全体に占める比率も17%から22%に上昇。また上位50社の金額も、2010年の6650億ドルから2011年には7490億ドルに増加している。

 アップルの海外滞留資金640億ドル(2011年末時点)は、つまり、1兆2400億ドルの57%=7068億ドルのなかで、だいたい9%を占めているという計算になる。

Repatriation Tax Holidayに反対する3つの理由

 「Repatriation Tax Holiday」実施を再び求める大企業側のこうした動きに対し、反対の声があることも以前少し触れた。たとえば、米財務省のブログには次のような記述を含む投稿が掲載されている。

「長期的な視点に立った包括的な税制の改革が、米国企業全体に便益をもたらし、米国経済の競争力向上につながる可能性がある…。ところが、ごく一部の企業("a narrow group of businesses")は、包括的な税制改革ではなく、一時的な(期限付きの)Repatriation Tax Holidayに主眼を置くべきだと示唆している … このアイディアは数年前に試みられた際、一部の米国籍グローバル企業にかなりの額の税控除をもたらした。しかし、この種の一時的な措置を優先して、包括的な税制改革から目を逸らすことは間違いであろう」(註14)

 ここで「数年前に試みられた」と出てくるのが、2004年にブッシュ共和党政権下で実施されたRepatriation Tax Holidayで、その「空振り」に終わった結果が反対派の主な拠り所になっているようだ。反対派がRepatriation Tax Holidayを単独で行うことに異議を唱えている理由は、次の3つにまとめられる。

  1. 雇用創造に結びつかなかった
  2. 企業による海外事業への利益つけ替えを助長する
  3. 政府の財政赤字拡大につながる

 と、ここで紙幅が尽きてしまった。次回は、上記に掲げた異議の理由をもう少し詳しく紹介したい。

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註14:米財務省のブログから

Comprehensive, long-term reform has the potential to benefit businesses across the United States, and make our economy more competitive.(略)A narrow group of businesses has suggested that instead, our primary focus should be a temporary repatriation tax holiday - an idea tried a few years ago that gave a select group of U.S. multinational corporations a temporary, substantial tax break on their overseas profits. However, letting our eye off the ball of comprehensive tax reform in favor of a temporary measure of this kind would be a mistake.

Just the Facts: The Costs of a Repatriation Tax Holiday

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