SAPジャパンは5月9日、4月に移転した東京・麹町の新オフィスで記者発表会を開催し、2010年5月に買収を発表したサイベースの製品群を取り込み、データベース(DB)市場に本格的に参入することを明らかにした。インメモリDBである「HANA」を中心に据え、サイベースのバッチ処理向けDB「IQ」、リレーショナルDBの「ASE」、モバイル向けDBの「SQL Anywhere」などを組み合わせてDB製品を拡充することで、企業のリアルタイム経営を支援していく考えだ。
データベース市場参入を宣言した馬場氏
リアルタイムコンピューティング事業本部長の馬場渉氏は「DBは数十年変わってこなかった。ボトルネックは明らかにDBでありハードディスクだ。イノベーションがないなら、インメモリDBのHANAを基盤にそれを起こす」と宣言した。
「これまで明言を避けてきたが、今回は“SAPがデータベースに本格参入”ととらえてもらって構わない」(馬場氏)
SAPがDBに参入するにあたり、欠かせなかったのがサイベースの製品群だ。4月1日には、SAPのHANAおよびテクノロジーを担当する営業部門と、サイベースおよび子会社のアイエニウェア・ソリューションズの営業部門を統合した「データベース・テクノロジー営業統括本部」を新設。サイベースの早川社長がトップに就任した。
早川氏は「長い間サイベースでDB事業をしていたが、(企業規模の面から)自分たちだけで大きくするのが難しかった」と打ち明ける。サイベースのプロダクトマーケティング担当シニアディレクター、ダン・ラール氏が「150億ユーロに上るビジネス規模、歴史を考えてもサイベースにとってSAPは信頼のおけるアドバイザー。有益な統合だった」と話したように、DB関連製品をSAPの分厚い顧客ベースに売り込める利点は大きい。
標準化と簡素化の重要性を強調した安斎社長
7月には営業以外のバックエンド組織を統合し、将来的には完全に統合する予定だ。
この日、冒頭の挨拶に立ったSAPジャパンの安斎富太郎社長は、「アプリケーション」「分析」「モバイル」「データベース」「クラウド」の5本柱をHANAが支えるという現在のSAPの基本戦略を紹介。キーワードとして「標準化」と「簡素化」の推進を強調した。
なお、SAPはDB製品を採用する企業への支援策も打ち出した。グローバルで270億円規模の「SAPデータベース採用支援ファンド」を、同じく125億円の規模で「SAP HANAリアルタイムベンチャーファンド」を創設する。また、HANAの定価を初回の発売時から半額以下に切り下げたことも併せてアピールした。