米Citrix Systemsが、サンフランシスコで年次カンファレンス「Citrix Synergy 2012」を開催中だ。
Citrixは、カンファレンス初日の5月9日に「モバイルエンタープライズ」の新戦略を明らかにしている。「People(人)」「Data(データ)」「Apps(アプリケーション)」「Devices(デバイス)」によって構成するモバイルエンタープライズで、モバイルワークスタイルとクラウドサービスを密接に結びつける戦略だ。
前編となる本稿では、同社社長 兼 CEO(最高経営責任者)のMark Templeton氏による初日の基調講演の中から「People」と「Data」に関する動向をレポートする。
企業向けFacebookのPodio
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まず「People」の分野では、オンラインサービス「GoToMeeting HDFaces」のiPad対応が発表された。オンライン会議のGoToMeetingは、ビデオや音声でコミュニケーションしながら、プレゼンテーションなどの各種資料をリアルタイムで共有できるサービス。HDFacesはその名の通り、高精細で高画質なビデオ会議を実現する機能だ。
「(GoToMeetingによって)誰とでも、どこからでも、シームレスに、オンデマンドで働くことができる。それを実現するのは、私たちのGoToMeeting以外にはない。GoToMeetingは非常にシンプルであるため、(利用にあたっての)コストが低くなり、ROIにもつながる」(Templeton氏)
GoToMeetingはコラボレーションを促進するためのサービスだが、Templeton氏は「コラボレーションから生まれるワークフローに対応する必要がある」と強調。4月11日に買収したチームコラボレーションのためのオンラインサービス「Podio」を紹介した。
Podioは、チームでの仕事を円滑に進めるためのさまざまな機能を提供しており、いわば「企業向けのFacebook」とも言えるサービスだ。特に「モバイル」と「ソーシャル」の性格を前面に押し出したサービスにすることで、「PC時代」の製品やサービスとは異なるコラボレーション体験を提供するという。Podioの利用は5人まで無償となっている。
そしてこのカンファレンスに合わせて、PodioがGoToMeetingのほか、後述する「Citrix ShareFile」と「Evernote」、オンラインストレージの「Google Drive」「Microsoft SkyDrive」「SugarSync」に対応することが発表された。オンラインストレージの「Box」「Dropbox」、そして「Google Docs」には既に対応していた。
これまで、Citrixは競合する企業や製品、サービスをあまり作らないように事業を進めていた節があるが、オンラインサービスに参入してからはパートナー大手のMicrosoftやCisco Systemsと競合している。また、Podioのようなサービスを加えることで、Facebookのような新興企業とも競合し始めたといえよう。
IT分野では、エンタープライズ(企業向け)とコンシューマー(個人向け)の境目が曖昧になってきているが、その文脈はITを使う側の視点で語られることが多い。しかし、ユーザー側と同じように、ベンダーの競争環境でもその境目が曖昧になりつつある。この点については、後日掲載する同社CMO(最高マーケティング責任者)Wes Wasson氏のインタビューを参考にしてほしい。