中期経営計画に「手応え」の日立、目標達成を「断念」したパナソニック - (page 2)

大河原克行

2012-05-16 09:00

 中西社長は「遠ざける事業」という表現を使って事業再編に取り組んできた。まさにテレビ事業をはじめとする収益性に課題を持つ事業を遠ざけることで、収益性の改善を図り、一人勝ちともいえる体質を作り上げた。

 その日立製作所は、2012年度は3カ年の中期経営計画の最終年度を迎える。

 売上高10兆円の目標に対しては、2012年度業績見通しで9兆1000億円、海外売上高比率も50%以上の目標に対して43%と下回ることになるが、これは、海外事業比率が高いハードディスク事業をウエスタンデジルタへ売却したこと、中小型ディスプレイ事業をジャパンディスプレイに売却したことなどが影響している。

 その一方で、営業利益率は5.3%と目標の5%超を達成。最終利益も、2000億円台の安定的確保という目標に対して、2011年度の3471億円に続き、2012年度には2000億円の維持を目指すなど、計画通りの進捗となっている。

 中西社長は、数値の観点からは「まずまずの水準だと認識している」としながら、「なにをターゲットにし、なにを課題として認識するかが明確になった」と語る。

 そして、2012年度は「社会イノベーション事業」「経営基盤強化」「グローバル成長戦略」の3点に取り組んでいく方向性を示す。

 しかし、改革の手綱を緩める考えはない。

 2012年度は、全部門での黒字化を目指すなかで、「ブレイクイーブンを予想しているデジタルメディア・民生機器部門が依然として要注意」と中西社長は指摘する。

 また、「遠ざける事業は常にある」とも語る。

 そして、今後の経営基盤強化で重要な取り組みになるのが、通称「スマトラ」と呼ばれる「Hitachi Smart Transformation Project」である。

 「スマトラ」は、日立グループのすべてのアクティビティにおけるコストを分析し、コスト構造を根源から見直すもので、総コストの5%削減により財務体質を強化。M&Aなどの成長投資に向けたキャッシュの創出などに取り組む。

 「財務体質をきっちりと固め、M&Aなどの次の投資への自由度を高めていくことが大切である」とする。そして、引き続き社会イノベーション事業への経営資源の集中を進め、課題となっているグローバル戦略に基づく重点地域への投資拡大、ボーダーレスな人材育成などにも取り組む姿勢をみせている。

 日立が目指すのは「グローバルメジャープレーヤー」——それに向けた事業体質の改善に、引き続き力を注ぐ姿勢を示している。

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