厳しい現実
2010年度のアメリカの財政赤字は1.3兆ドルでした。この額は、1776年の建国から1984年までの間にアメリカが抱えた負債総額とほぼ同等です。つまり、アメリカはたったの1年間で、好景気、不景気、そして戦争を経験したおよそ200年間分に相当する額を浪費したことになります。専門家は、2010年から2019年まで、アメリカの負債は、毎年平均して9000億ドル増えていくだろうと予測しています。
2002年、リチャード・チェイニー元大統領は「レーガン大統領は、財政赤字は問題ではないことを証明した」とコメントしましたが、実際、赤字は問題です。確かにアメリカ経済にとって赤字はめずらしいものではありません。しかし、今抱えている負債額は驚くほど大きいため、世界の経済情勢が変わるほどの影響を及ぼすでしょう。また、増税や大幅な予算縮小、給付金の減少や金利の上昇などが引き起こされます。
2009年と2010年の赤字額はアメリカのGDPの10%に相当し、これは第二次世界大戦後最大です。確かに、このけた外れの出費は不況から脱するためのものでしたが、負債が増えれば増えるだけ、その国は不安定になっていく可能性が高まります。
アメリカの現在の負債総額は14兆ドルに上ります。この額は驚くべきことに、GDPの90%に相当します。国の生産高に対する負債額の割合がここまで高くなると、政府が更に借金を重ねれば必ず金利が上がります。金利が上がればインフレになり、そうなると投資家は債券の購入をためらいます。なぜなら、低い金利で自分の資産を固定したくないからです。すると債券価格は下落し、さらに金利は高くなります。財政赤字が膨らむと、アメリカは資金供給のためにさらに長期国債を発行しなければなりません。そして、この新たな国債発行によって、債券の価格がさらに下落するのです。
アメリカの現在の悲惨な状態は、冒頭の部分からも理解ができます。また貨幣価値が200年前とかなり異なることを考えれば、現状がほぼ末期的な状態にあると考えられます。この状態は本当に改善されるのでしょうか?