独SAPが5月17日まで米フロリダ州オーランドで開催した「SAPPHIRE NOW 2012 Orlando」では、多数の顧客やパートナー企業が参加し、会場のあちこちでベストプラクティスの共有や自社の経験を共有するセッションが開かれた。そんな中、日本の三井物産がユーザー企業としてセッションを持ち、クラウドを使った2種類のプロジェクトを紹介していた。
三井物産がセッションで紹介したのは、SAPの営業支援機能のSaaS「Sales OnDemand」のパイロット導入、それにSAP内にあるクラウドインフラでプロトタイプ開発や検証を行うというクラウド利用例の2つだ。ここでは、スピーカーを務めた三井物産 IT推進部技術統括室 室長の林郁夫氏のセッション後のQ&Aを合わせてレポートしたい。
スピード、ERPとの統合:境を超えた営業マンのコラボを支援する「Sales OnDemand」
さっそく、Sales OnDemandからみてみよう。Sales OnDemandを導入した背景について、林氏はいくつかの理由を挙げた。まずは、営業担当者が地理的距離や本社と子会社などの組織の境を超えてコラボレーションができるという点だ。グローバル企業である同社は、国をまたがったり組織の枠を超えて営業活動することが多く、Sales OnDemandを使うことでメリットが得られると判断したようだ。
サービス側の進化もある。「これまでの営業支援というと静的で情報提供にすぎないように見えた。だがコンシューマリゼーションのトレンドもあり、コミュニケーションは動的になっている。最近の営業支援ツールはソーシャルメディア要素を持ち、営業マンをエンパワメントし、利用の障壁を下げている」と林氏は語る。
また、スピードにも言及した。Sales OnDemandの導入決定からシステムの設定が完成するまでに要した時間は、わずか1カ月程度。「実装プロセスはとても簡単で速い」と林氏。スピードはコストメリットにもつながると続ける。
営業支援のSaaSといえばいくつかの選択肢があるが、三井物産の場合はすでにSAPのERPが入っているということがSales OnDemand導入決定に大きく影響したようだ。「バックエンドとの統合はとても大切だ。たとえば、営業マンは販売に関する意思決定を行うのに、在庫状況の確認など重要な情報にアクセスすることがある」と林氏。「これがSAPを選んだ理由だ」とパネリストに語った。
セッションに同席していたコンサル企業のOptimal SolutionsプレジデントのSam Sliman氏は「他社のクラウドを部分導入したが、毎月支払う金額に割高感を感じていた」と、クラウドのサイロによるコスト高を指摘し、SAPの方がコストでも競争力があったと明かした。
なお、Sales OnDemandは日本では提供されておらず、三井物産は海外から導入した。同社にとっては初のSAPのSaaS導入となるそうだ。すでにライブ状態ではあるが、現在一部署、ユーザー数20人に限って提供しており、今後ユーザー数を広げていく計画だ。Sales OnDemandについては、同社が検討中のモバイルでも重要なアプリになりそうだ、と将来に期待を見せる。